• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

私がiPadを買うべきでない理由

2010年6月4日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 iPadを見た。
 買うことになるだろう。

 わかっている。どうせ買うのだ。それもたぶん一週間以内に。三日か五日の間買わずに我慢するのは、自分に対する言い訳に過ぎない。あるいは手続きみたいなものだ。よく頑張ったぞオレ、とそう自分に言い聞かせながら、でも結局買う。いつもそうなのだ。セルフおあずけストラテジー。デジタルマゾヒストのティピカルな行動パターンのひとつだ。

 見せてくれた編集者氏は、ほとんどアップルのセールスマンだった。それほど全力で私にiPadの魅力をアピールした。

「で、ここをこうするとほらフォトフレームになるわけです」
「……うう……」
「動画も見られますよ」
「……うう……あ……」
「ね。なかなかの画質でしょ?」
「…………」

 それにしても、こういうブツをいち早く手に入れた人間は、なにゆえに必ずや布教活動を展開することになるのであろうか。あまた生まれいずる市井のペテロたち。その無償の情熱と行動力。

 とにかく、事ここに至ったらもうダメだ。経験上よく分かっている。迷っているということは、じきに買うということなのだ。
 買わない物件については、最初から迷わない。迷いが生じているということは、すなわち買うためのルーチンに突入したことを意味している。

 今回は、話題のiPadについて、購入前の段階で自分が感じていた(←既に過去形)いくつかの抵抗点を記録しておくことにする。

 買えばどうせしばらくは夢中になる。
 が、買うまでのしばらくの間、買わないでいるための理由が自分の中に存在していたことは事実で、その理由が一定の説得力を保持していたのである。

 当稿では、それを書く。私がiPadを買うべきでない理由について。無駄な抵抗だが。読者の皆さんの後学のために。

「オレは第三世代を買うよ」
 と、私は発売前から、周囲にそう宣言していた。
 それが一番賢い買い方だからだ。

 いや、本当のところ、このテのガジェットについては、愚かな購入事例が数例あるばかりで、賢い買い方なんてものは、そもそも存在しないのかもしれない。が、それでもやっぱり初期バージョンに飛びつくのは、愚かな処世ではある。猫舌のくせにチーズフォンデュに目がない男、みたいなこの種の前のめりの購入者を、業界の人間は「人柱」と呼んでいる。そう、橋梁や城郭の造営に先立って、基礎固めないしは魔除けのために土壌に埋められた不運な人々の別名だ。現在の土木業界では、人柱の使用は文字通りの意味では廃止されている。が、新発売のブツに付随する比喩的な意味での人柱は、間違いなく実在する。

 実際、初期バージョンの初期不良を生身で味わいつつ、それらの経験を貴重なフィードバック情報として提供する捨て石のユーザーがいないと、新製品は市場に定着することができないものだからだ。

 時代のバスに乗り遅れるな、と、アジテーターは言う。
 が、だまされてはいけない。
 時代のバスに類するものが仮にあるのだとするなら、それは、全員が乗るまでは発車しない仕様になっている。あたりまえの話だ。

 むしろ警戒せねばならないのは、時代のバスに先立って出発する粗忽者のバスにうっかり乗ってしまうことだ。

コメント31件コメント/レビュー

iPadの善し悪しはともかく、何のために買うかの方向性がないと鞄の中の重りになるでしょう。私自身、おもしろ半分にiPhoneを2台目携帯としてもっていましたが、ガジェットとしてはおもしろいが、携帯としての性能や機能は日本の物に比べて悪い。パケット代も使っていなくてもなぜか発生するという謎仕様。私自身、iPadは自分の買っている週刊誌や月刊誌が、『紙の状態より安い価格(紙代、物流費用がはぶかれるのだから可能なはずだ)』で提供され始めたら購入を検討しようと思っている、但しwifi版を。(2010/06/08)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「私がiPadを買うべきでない理由」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

iPadの善し悪しはともかく、何のために買うかの方向性がないと鞄の中の重りになるでしょう。私自身、おもしろ半分にiPhoneを2台目携帯としてもっていましたが、ガジェットとしてはおもしろいが、携帯としての性能や機能は日本の物に比べて悪い。パケット代も使っていなくてもなぜか発生するという謎仕様。私自身、iPadは自分の買っている週刊誌や月刊誌が、『紙の状態より安い価格(紙代、物流費用がはぶかれるのだから可能なはずだ)』で提供され始めたら購入を検討しようと思っている、但しwifi版を。(2010/06/08)

私も本田△のゴールラッシュを見たい!ポケットのiPhoneYou-Tube画面で。あいかわらず、オダジマさんキレキレです。(2010/06/08)

青いりんごを抱きしめてぇ。 サポートは無いに等しい、自己解決の長い道のりにならねば良いのだが。 まあ、そのマゾ性を持ってりんごの道を歩むのだろうけど。(2010/06/08)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長