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ロスジェネの勝ち組が『仕事漂流』する理由
~現状維持では生き残れない…

  • 大塚 常好

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2010年6月30日(水)

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仕事漂流――就職氷河期の「働き方」』稲泉連著、プレジデント社、1680円

 いわゆるロストジェネレーションである。1990年代半ば~2000年代前半の「就職氷河期」に就職した若者たち。

 そのひとり、東京大学法学部出身の男性は、経済産業省を辞めてしまった。2000年代初め、入省3年目の春のことだ。退職理由は、「パスが見えるのが耐えられない」だった。

 パスとは、入省後2年間は雑用、その後に係長、課長補佐、16~17年後に課長といったお決まりの昇格のルートを指す。

 現在32歳のこの男性は、高級官僚の肩書きをあっさり捨てた後、ITベンチャー役員→タイルメーカー役員と職を移る。

「努力の継続こそ美徳」が通用しない世代

 本書は、冒頭の元官僚を含むこの世代の学歴エリートたち8人が、いかなる理由で入社間もなく辞職し転職したのか、何層にも重なる心模様や葛藤を、1人当たり40ページ以上かけて綿密に描いたノンフィクションである。

 史上最年少の26歳で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した著者も、同世代。これまでフリーターや引きこもり、就職活動に打ちこまない若者や、企業組織で働くことに躊躇する人々を取材対象にすることが多かった。だが、本書では一転、「いい大学からいい企業へ」という勝ち組にフォーカスしたのだ。

 彼らは退職→転職の経緯を語る中で、以前属した「企業・組織」に抱いていた不満を述べていくことになる。たとえばこんな不満だ。

  • 後輩が入らないので、自分はずっと新人扱いで、雑用ばかり。
  • アフター5の飲み会は、愚痴や女性派遣社員の噂話ばかり。
  • 営業ノルマはひどく厳しく、帰宅深夜は当たり前。
  • 上司は自分を「使えない」と罵倒する。
  • ともかく仕事が退屈きわまりない。

 ちなみに彼らが新卒で勤め始めたのは、企業が採用数を減らし、終身雇用・年功序列が崩れ、成果主義が導入され始めた頃である。

 もちろん、退職を決定付ける理由は単純ではない。複雑な事情や感情が重なりあって、「辞める」となる。だが、これらの不満は世代と関係なく、誰もが多かれ少なかれ抱いてきたことであり、評者には「辞める」動機としては弱い、と感じられた。

 評者は、登場人物より一回り上のバブル世代。読みながら思わずつぶやいた。

「正社員として採用されない人や、すぐ雇用調整のままクビにされる人に比べ、ずっと恵まれている。収入も悪くないはずなのに」
「みんな20代の頃、壁にぶつかる。すぐ辞めるのは、こらえ性がない証拠」。

 ちょっと上から目線のオヤジの理論だろう。でも正論だ(と思う)。

 何しろ、聖路加国際病院の日野原重明理事長は、最新著『働く。社会で羽ばたくあなたへ』でこう言っている。

「人は生きる中で次第にその人らしくなっていく。いまのわたしは、百年をかけてできあがったのです」

「(適職や天職を見つけるには)目の前にある仕事に真剣に取り組むこと、その果てしない繰り返しに耐えることです」

 社長や経営者など「偉い人」ほど、「努力の継続こそ美徳」と語る。企業の規模や、仕事内容に関係なく、「若者よ、しっかり腰を落ち着けて、励め。額に汗しろ」ということなのだろう。

 年齢だけは、すごろくの半ばまでコマを進めてきた評者も、まあ似たような意見だった。この本を最後まで読むまでは……。

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