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5時間で1400部以上売れた電子書籍

「文学フリマ」で分かった「電書」の大いなる可能性【その1】

  • 深川 岳志

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2010年7月7日(水)

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 iPad(アイパッド)やKindle(キンドル)など、新しいデバイスの登場で電子書籍が注目を集めている。そんな中で、まったくの手作りの電子書籍が画期的な売り上げを記録した。

 今年5月に行われた「第10回文学フリマ」がその会場。文学愛好者が集まって同人誌を売り買いする即売会だ。会場の各ブースの机の上には、それぞれの文学サークルが作った紙の同人誌が山と積まれていたが、一カ所、コンピューターが置かれただけの殺風景なブースがあった。一際目立つそのブースで販売されていたのが、電子書籍化された同人誌だった。

 たった5時間の即売会で売れたのは1400部以上。同人誌即売会としては画期的な数だ。

 仕掛け人は米光一成立命館大学映像学部教授とエンジニアの松永肇一氏。米光氏が中心となって活動する「電子書籍部」が制作と販売を担った。松永氏は技術的なバックボーンを支えた。

 電子書籍をあえて「電書」と呼ぶ米光教授と松永氏。活字離れが叫ばれて久しいが電書と書籍には、新しい可能性まだまだ秘められていると語る。

 文学を愛するお二人に、今回から5回にわたって電子書籍と“紙の本”の明るい未来について熱く語り合っていただいた。

―― 5月28日に大田区産業プラザPiO大展示ホールで第10回文学フリマが開催されました。これは言ってみれば、コミケの文学版です。文学好きによる同人誌の即売会。私も会場に伺ったのですが、大変な盛況でしたね。

米光 当日は雨だったけど、来場者は多かった。場内アナウンスで、案内のカタログが足りなくなったので帰る人は受付に戻してほしいって言ってたよね。

5時間の開催時間中にリピーターが

松永 参加人数は、去年が1800人で、今年が2400人。広い会場なんだけど、人だらけだった。会場の雰囲気をいうと、とにかく何列も何列も、長机がだーっと並んでいる。

 ひとつのブロックは、長机が5つずつ2列に並んでいて、真ん中に売り子が挟まっている感じ。通路エリアを隔ててまたワンブロック。そんな行列が11列もある。ひとつの長机の半分が1ブースだから、ええと、全部でいったいいくつあるんだ。440個の売り場があるってことか。実際はひとつのサークルが1ブースとは限らないので、参加サークルは380だったそうですが。

 販売時間は短くて、11時始まりの4時終わり。たったの5時間。これは搬入や撤収に時間がかかるせいですけど。

2400人が参加した「第十回文学フリマ」会場風景(写真:米光一成氏提供)

―― 聞いているだけでめまいがしてきそうな盛況ぶりですね。各売り場には紙の本がどさっと積んであるので、物理的な圧迫感もすごかったです。で、そのブースのひとつが電子書籍部の売り場だったわけですが、ほかの売り場とはちょっと異質な感じがしました。

米光 なにしろ机の上に本がない(笑)。同人誌即売会なのに、パソコンとチラシと見本しか置いてない。前回の文学フリマの時にもチラッとキンドル用の電子書籍を売ったんですが、今回はそれを大々的にやりました。ぎりぎりまで頑張って15種類のラインナップを用意した。大々的なんだけど、販売はパソコンが1台あればできちゃうから販売風景はすごく地味。

―― それは要するに紙の本を会場で売るのではなく、電子書籍を「対面」で売っているってことですね。販売ブースでは、具体的にどんなことをしていたんですか?

松永 あらかじめウェブ上でメールアドレスを登録してくれていた人には、電書ナンバーを聞きます(※「電書ナンバー」の仕組みについては次回のお話の中で詳しく説明します)。登録していない人にはその場でメールアドレスを聞く。あとは、お客さんが何を買うかですね。チラシとか見本を見て買う本を決めてもらって、お金をもらう。販売ブースでしていたのはこれだけです。お金を払ってくれた人にはその場でメールを送る。

―― 私も受け取りました。メールには、3種類くらいのダウンロードアドレスが書いてある。大きめのPDFと小さめのPDF、それから電子書籍の標準規格であるePub(イーパブ)ですね。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長