(前回から読む)
『セックス・アンド・シティ2』がいかにひどい映画であるかはすでに書いたが、もとのテレビシリーズの『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下SATC)が女性視聴者に人気があった大きな理由は、4人の女性同士の絆にあった。
用もないのに真っ昼間(あるいは真夜中)に電話をかけ合ったり、ブランチに何時間もかけてしゃべったり、下着からウェディングドレスにいたるまで買い物をともにしたりといった関係は、多くの男性に不可解なものと映るようだが、SATCが描く女性同士の友情の本質は、そういったところにあるのではない。
むしろ重要なのは、女性たちが、互いの前で感情をさらけ出し、それに対して率直な反応を示し合い、喜びや怒りや悲しみを共有する、ということだ。互いの言動や感情に正面から向き合うぶん、女性たちは、ときには互いの人間性に価値判断をくだして、喧嘩になることもある。しかし、そうした遠慮のない体当たりのつき合いだからこそ、数々の衝突を繰り返すなかで、女性たちの絆は強まり、4人は互いにとってかけがえのない存在となっていく。
日本でもアメリカでも、多くの男性は、 大の大人同士がこんなに感情むきだしの友達づきあいをするものかと、理解に苦しむことが少なくないようである。
19世紀まで男性同士同じベッドで寝るのは珍しくなかった
しかし、19世紀までのアメリカでは、男性同士の絆は高貴なものと考えられており、男性たちは男の友情をきわめて重要視していた。女性は男性に劣った存在と考えられていたこともあり、また、女性と男性は社会的・文化的に別個の領域を占めることがジェンダー規範だったこともあって、男性は知的にも感情的にも他の男性とのつながりを積極的に求めたのである。
さらに当時は、男性同士が、抱擁などの身体的な触れ合いで友情を表現することもごく普通のことで、男性が別の男性の膝に座ったり、男性同士がひとつのベッドで寝たりといったことは、それほど珍しいことではなかった。異性愛者(heterosexual)対同性愛者(homosexual)という明確な二項対立で性的アイデンティティが規定される以前の性文化においては、男性同士の交友は、精神的にも身体的にも実に親密だったのである。
そうした男性の社交が変化するのは20世紀に入ってからのことである。「同性愛」と定義された者が社会的に排除されるようになるのと同時に、都市文化の発達によって、映画館や遊園地など、男性と女性が混じって余暇を楽しむ空間が誕生し、しだいに社交生活は異性との交際を中心にしたものに変化した。また、産業社会において、男性は他の男性を、感情をさらけ出し合う友人というよりも、ライバルや競争相手ととらえる傾向が強くなった。
特定化されてきた男の友情の場
こうした経緯を経て、アメリカにおいて、強い男性同士の友情が尊ばれる場は、かなり特定化されてきた。
ひとつは、軍隊である。育ってきた背景や戦争についての立場は多様でも、男ばかりの環境で長期間生活し、苛酷な状況のもとで、とにかく生き延びるという共通の目標をもち、互いに依存し、ときには自分の弱さもさらけ出さなければならない男性たちにとって、戦友たちがかけがえのない存在になるのは当然である。ほぼたえず世界のどこかに軍を派遣しているアメリカにおいて、 戦場における兵士や士官たちの友情はひんぱんに映画やテレビ番組、文学作品の題材となる。
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