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ボヤキ7割の映画渡世『ガキ以上、愚連隊未満。』
~好きだから、オイシクないけど撮り続ける

2010年7月7日(水)

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ガキ以上、愚連隊未満。』井筒和幸著、ダイヤモンド社、1680円

「花なんか添えたいね」

 そこは、寝静まった町の公園。つぶやいたのは、「未亡人下宿」シリーズの巨匠・山本晋也監督で、時代は1970年代後半のこと。

 当時、低予算のピンク映画の撮影日数は限られ、このときの現場も4日で撮りきらねばならなかった。余裕がないということは、それだけ段取りやアクシデントへの臨機応変さがスタッフに求められた。しかも監督の思いつきに、応えねばならない。

山本晋也監督の無茶なオーダー

 今でこそニコニコ顔の「カントク」だが、日活ロマンポルノを量産していたころの山本監督の現場は、スタッフが次々と逃げ出す苛酷なものだった。困った巨匠からじきじきに、ヒマなら手伝ってよ、と声がかかったのは、まだ著者の井筒氏が自主制作でピンク映画を1本撮った若造のころ。タフに見えたのだろう。

 ラストシーンにまでこぎつけたところで、路傍の墓石に手向ける花がほしいなぁ、と巨匠。それなら日のあるうちに言うとってくれよ、と思っても口にできるわけがない。そこは強烈なタテ社会だ。探しに出てみたものの、一般市民の住む町、それも真夜中。都合よく開いている花屋などあろうはずもない。

〈ボクは小田君という下の助監督と焦りまくった。離れたロケバスの運転席にアクセサリーの造花が飾ってあったが、ベテラン車輛部のドライバーが「××組ならいいんだろうけど、チョク組(山本監督の愛称)じゃね」と苦笑った。一緒に闇夜が続く広い公園を電灯を振り回し眼を皿にして歩き回ると、芝生に白い水仙が一輪落ちていた〉

 神の恵みと1本の水仙を手にして戻ったが、巨匠はファインダーを覗き、「ま、こんなサイズで、本日はお疲れさんね」。さも、見つけてきて当然という態度。えっ、それだけかい!?

 スタッフは各々持ち場でやることがある。花探しにさ迷い出た若いモンのことなど気にかけていられるわけもない。それでも、監督の非情を埋め合わせるかのように、周囲のスタッフはねぎらいの声をかけてくれたという。

 理不尽といえば、「ウィンナー百本」事件。「大盤振る舞いの食卓シーンが撮りたいねぇ」。いつもながらの巨匠のつぶやきで、午前6時に若い衆は手分けし、肉屋のシャッターを叩いては哀願してまわったとか。

 映画の現場は修羅場。現場の数だけ、こうした武勇伝がおもしろおかしく語りつがれてきたにちがいないが、しかし監督という人たちはどうしてこんなにそっけない態度を見せるのか。井筒氏の回想からは、たいへんではあっても、恨んでいる感じは伝わってこない。

 不条理を突破しないと、4日で映画を1本撮りきれるものでもない。おかげで、不可能を可能にしたという自信がタフさを養っていくことになるのだろうが。

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