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神様を相手に絶望的な戦いを挑んだ「彼」。その心中は?

『失楽園』ジョン・ミルトン著

2010年7月13日(火)

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絶望的だが続けざるをえない戦い

勝てるはずのない戦いを、それでも続行しなければならないときがある。

展望など何もない。何度挑んでも負けるに決まっている。
それでも虚勢を張り、動かない足を全力で引き上げて、闇の中へ、やっと一歩踏み出す。
前方に目をこらしても何も見えない、そのあまりの暗さに、めまいがしそうだ。

なぜぼくはこんなことをしているのだろう。
そもそもこんな戦い、始めなければよかった。
以前を思い出すと、まるで「楽園」のようだったと思う。
でも、誰のせいにもできない。
ぼくは自分の考え、自分の意志に従って、「楽園」を失うようなことを始めてしまったのだ。

ムダなことは、もうやめたらどうか。
白旗を振って、泣いて謝って、許してもらうのはどうか。
いや、だめだ。
すでに多くの人を巻き込んでしまった。
大言壮語もした。
いろいろなものが、その方向で動き出している。
だから、やめられない。
絶望的だが、始めてしまった以上、続けざるをえない戦いなのだ。

いや、「戦い」と言えば聞こえはいいが、誰の目にも無意味で無価値な「愚行」に過ぎないだろう。
そして、ぼくの人生なんか、はじめから今まで、まるごとそんなものかもしれない、とも思う。

神に背いて楽園から追放される

とくに三十代のある時期、ぼくは毎日、そんなふうに考えていた。
ぼくの人生など、「始めてしまった以上、続けざるをえない」という他に、続行する理由なんてあるのだろうか。以前はあると思っていた。しかし、気がつくと、それ以外は何もなくなっていた。

17世紀イギリスの詩人ジョン・ミルトン(1608年生―1674年没)が書いた『失楽園』を読んだのは、そんなときだった。『旧約聖書』の「創世記」から題材を取った長編叙事詩だが、内容はどうでもよかった。
ただ生活費を捻出するために少し威勢のいい記事を書く必要があって、何やら演説めいたセリフが多いこの本は、表現の参考になると思ったのだ。手に取った理由は、それだけだった。

しかし読んでみると、これは、まさにそのときのぼくが読むべき本だった。「絶望的だが、始めてしまった以上、続けざるをえない戦い」を描いた詩だったのである。

タイトルの「失楽園(Paradise Lost)」とは、「神に背いて楽園から追放されること」だ。この本では二度起こる。
一度目は、天使ルーシファが神に戦いを挑んで破れ、地獄へ落とされる。
二度目は、アダムとイーヴが知恵の樹の実を食べ、エデンの園から追放される。

ひとつ目のエピソードのルーシファこそ、「絶望的だが、始めてしまった以上、続けざるをえない戦い」に邁進する天使である。
いや、そんな読み方はいかにも素人めいた、浅い、間違った読み方だろう。しかし、そのときのぼくには、そんなふうにしか読めなかった。そしてそんな読み方だったからこそ、ぼくの力にもなったのである。以下は、当時のぼくが読んだルーシファである。

天使ルーシファはスターだった

天使ルーシファ(「明星」の意)は、文字どおり天上のスターだった。天使としての身分は高く、人気も実力も兼ね備えていた。権力を持ち、仲間を思いやる、名誉ある偉大な天使だった。
また、神に対しては誰よりも従順で、神に求められた奉仕をし、神を賛美した。それは彼にとって当然のことであり、少しも辛いことではなかった。
もちろん彼は、神に愛されていた。そして、とても多くの恩恵を受けていた。神から得られるものは、すべて得ていたと言われるほどだった。

愛されることが重荷となる

愛されたり、恩恵を与えられたりすることは喜ばしいこと。しかし、それが少しずつ重く、息苦しくなってくることもある。一方的な場合、そして、受ける側が負い目に感じる場合だ。
愛されれば愛されるほど、その圧迫感は増していき、理不尽なことだが、やがて自分を愛してくれる者への憎しみに変わっていくだろう。

ルーシファもそうだった。
彼は、神から一方的に受けるばかりの恩恵を、まるで日々、負債が増していくように、つらく感じていた。
何とかして、と彼は考える、この負債をいっぺんになくせないものか?

自由であると思うと、いかなる不自由にも耐えられない

またルーシファは、自分は自由な存在のはずだ、と考え始める。
だとしたら、神に服従する立場にあるなんて、おかしくないか?
このような屈辱的な在り方を、なぜ我慢しなければならない?
天使ルーシファは、神に服従していること、それ自体にまで疑問を持ち始めた。

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