• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

パウル君は好きなタコ壺を選んだだけ

2010年7月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 テレビは今日もタコの話題だ。
 タコの名はパウル。W杯期間中、スペインの優勝をはじめ、担当した7試合について、すべての予想を的中させた高名な軟体動物だ。
 その、ドイツの水族館で暮らす予言タコ君の話題を、朝のワイドショーは今朝もまた同じフォーマットで、毎朝報じ続けている。
 いいかげんにしてほしい。

 大筋としては、面白い話ではあるのだと思う。それはわかっている。
 だから、パウル君関連の話題が紹介されはじめた当初、私は、寛大に聞き流していた。
「非科学的」だとか「ヤラセ」だとか、そういう野暮なツッコミは封印して、余興は余興として楽しむのが文化人のたしなみだと、そう考えたからだ。
 でも、いくらなんでもしつこい。
 耳にタコ……と、あえて耳タコな感想を述べねばならぬほど、このエピソードには無数のタコが取り付いている。あらゆる感覚器官に肥厚して行く感じ。一億総タコスキン化。壮絶な共同無感覚。

 なにより、笑顔がうっとうしい。
「どう? 面白いでしょ?」
「ほほえましいお話ね」
「うん。シャレた話題だね」
 と、話題がパウル君関連のニュースに切り替わる度にスタジオの面々が浮かべる笑顔の押し付けがましさがつらいのである。画面のこちら側に向けて同意を促してくる感じ。その態度が実にどうにも面倒くさいのだよ。

 パウル君が出てくると、カメラを向けられた出演者は、とたんに笑顔になる。キューサインが出たみたいに。
 その条件反射じみた左右対称の撮影用スマイルを、ワイプ用のカメラが順繰りに映し出して行く。
 低予算の情報番組ならではのアブラぎった演出だ。
 帯の2時間を毎日アリモノで埋める編成のちからわざ。
「引っ張りダコです」
 という十年一日の放送原稿も確かに問題といえば問題だが、あのニコニコワイプ画面の合意形成圧力はもはや暴力の域だ。やめてほしい。

 むごたらしいニュースや暗い話題ばかりが続く中で、この種のエピソードが珍重される事情はわかる。
 なんといってもタコはタコ。ほのぼの系ですから。
 あざらしのタマちゃんとか、カルガモの親子とか、そういうほっとさせる話題を一定のタイミングで挟んでいかないと、視聴者はじきに視聴を投げ出してしまう、と、おそらく現場はそう考えているのであろう。

 でも、しつこい。
 しつこいぞ。
 W杯期間中にあれだけ毎試合毎に報じたのだから、もういいかげんに捨てても良さそうなものじゃないか。
 ゆんべのタコの刺身が今朝のタコの唐揚げに化けて、その唐揚げを刻んでたこ焼きに仕上げた残りを再度ミンチにかけてドンブリにまぶしたものが今宵のディナーであるみたいな食生活を果たして誰が喜ぶというのだ?
 が、ワイドショーはやめない。
「ほーら、皆さんの大好きなあのユーモアたっぷりのタコのパウル君の話題ですよぉ」
 という感じで、今日も大ニコニコでコーナーを開始する。
 ドドンガドンな効果音にコミカルなBGM。
 太郎さんも思わず笑顔。安藤さんも。シワが寄らない程度に。

コメント29件コメント/レビュー

コメント欄が荒れているのかと思ったらそうでもありませんでした。投稿が取捨選択されているのでしょうか。この件に限らず、ネット上での攻撃的なコメントというのは、大手マスコミ(?)に存在するタブーや、なんだかよくわからないがこの日本国に残り続けている不公平なルールに対して、昔はそれこそタブーとして大声で言えなかったものがネットというツールを通じて出てこれるようになっただけ、だと思いますが。昔はきっとそういう不公平があってもなくても日本人が日本でそれなりに生きていけたのが、この国が弱っていく過程の中でそれもできなくなっていることに対する閉塞感や不満が高まっているんじゃないでしょうか。この日本という国に転がっているさまざまなタブーについて、きちんと俎上に挙げて議論し、仕分けしていくことができないままだと、この国はどうやらどんどんやせ細っていくのではないかと思います。(2010/07/16)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「パウル君は好きなタコ壺を選んだだけ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

コメント欄が荒れているのかと思ったらそうでもありませんでした。投稿が取捨選択されているのでしょうか。この件に限らず、ネット上での攻撃的なコメントというのは、大手マスコミ(?)に存在するタブーや、なんだかよくわからないがこの日本国に残り続けている不公平なルールに対して、昔はそれこそタブーとして大声で言えなかったものがネットというツールを通じて出てこれるようになっただけ、だと思いますが。昔はきっとそういう不公平があってもなくても日本人が日本でそれなりに生きていけたのが、この国が弱っていく過程の中でそれもできなくなっていることに対する閉塞感や不満が高まっているんじゃないでしょうか。この日本という国に転がっているさまざまなタブーについて、きちんと俎上に挙げて議論し、仕分けしていくことができないままだと、この国はどうやらどんどんやせ細っていくのではないかと思います。(2010/07/16)

タコのパウル君がW杯の勝者を百発百中的中させた。占い師の新宿の母のような扱いをする。なぜタコに占いをさせるのか?1955年、外貨獲得(ドル)のために、ハワイの日系人向けに、タコを冷凍して、外箱にFROZEN OCTOPUSと印刷して輸出しました。Octopasは悪魔の使いの意味があり、日系人とイタりヤ系しか食べない。Frozen TAKOに変えるよう、きっいクレームが来ました。なぜタコに占いをさせるか、教養ある訳知りの面々、はてな!!と疑問を期待したが、ダメでしたね。(2010/07/16)

ドイツ在住ですが、タコのパウル君の話は先週人から聞くまで全く知りませんでした。家にテレビがなく、ニュースはインターネットと週刊誌でチェックしますが、ワールドカップ特集は組まれてもタコの記事はわざわざ検索しないと出てこなかったのです。W杯の終わった今、『Octpus Paul』でGoogle検索しても記事は殆ど出てきません。白クマの赤ちゃん(ベルリンのクヌート、ニュルンベルクのフロッケ、シュトゥットガルトのヴィルベア)があれだけメディアに登場した事を考えると、ドイツ人も癒し系の動物ニュースが好きなのでしょうが、タコは彼らにとってただの軟体動物なのでしょう。未だに日本のメディアがタコの水槽の前に張り付いていることを想像するといたたまれない気持ちになります。(2010/07/16)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長