白地に赤い文字で「727」。新幹線の車窓を眺めていると、田んぼの真ん中によく立っている看板だ。
これは大阪に本社を置き、美容室を通じて販売を行う化粧品メーカー「セブンツーセブン」の広告。ちなみに、新幹線の車窓から見える野立て看板の中では最多本数(約40本)を誇る。
車窓はネタの宝庫
本書は、こうした新幹線の車窓から見える気になる看板、面白い物件、不思議な建物などを紹介する1冊だ。いずれも、一般の旅行ガイドには決して載らないものばかり。
帯文には「東京〜新大阪の2時間半が100倍楽しくなる本」とある。東京〜新大阪間。普通なら、本や雑誌を読む、ノートパソコンで仕事をする、たまに流れゆく風景に目をやる、あるいは眠る。そんなところだろう。
実際に、著者も書いている。
〈車窓風景は鉄道の旅に欠かせない楽しみのひとつ。でも、新幹線に乗ると、窓の外を見ている人は思いのほか少ない。仕事で頻繁に利用するビジネスマンが多いからだろうか〉
しかし、本書を読めば新幹線、とくに東海道新幹線に乗ってじっくりと車窓風景を見ないのはもったいない、ということがよくわかる。なぜなら、ネタの宝庫だからだ。それはビジネスにもつながる。
著者の栗山景(かげり)氏は38歳のフォトライターで、生まれながらの鉄道ファン。車窓風景を紹介する本の著者名が「景」とは何ともステキな符合ではないだろうか。
まず、東京駅から「のぞみ」に乗車する。新横浜駅の先、相模川を渡ってまもなく目に入るのが“牛と豚”。
〈東京のベッドタウンでもある平塚市だが、実は神奈川県一の畜産の町だ。今も数十軒の農家で、乳牛や食肉豚などが飼育されている〉
続いて、東海道新幹線といえば富士山。イチオシの眺望スポットは新富士駅手前の富士市吉原付近だという。
〈視界に遮るものが何もなく、まるで松竹映画のオープニングを思わせる光景だ〉
さらに進むと、豊橋と三河安城の間には奈良のJAが出している「奈良の柿」という野立て看板が見えてくる。ここ愛知県額田郡は筆柿の特産地。
〈あまりにも大胆な広告。三河の片隅で、今日も柿をめぐって静かで熾烈な闘いが繰り広げられている〉
それぞれの風景写真には、軽妙な解説文、略地図、3段階の目撃難易度が添えられている。写真はすべて実際に走行している新幹線の車窓から撮影されているため、中には若干ピントがズレているものもちらほら。しかし、それすらも臨場感を駆り立てるスパイスとなっているのだ。
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