「“う”あがり美人になりたくて」

Vol.5 「う」の人に“頑張れ”と言ってあげたくなったら?

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2010年7月30日(金)

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【本コラムのタイトルにつきまして、担当編集からのご説明】

 当連載担当編集のYです。いつもご愛読をありがとうございます。本日はメルマガのタイトルに当欄が出たためか、いつもより多くの方にお読み頂けて嬉しい限りです。ありがとうございます。

 はじめてお読みになる方から、「う」の意味が取れない、なぜ「うつ」を「う」と約すのか、についてのお問い合わせを頂戴しました。

 本稿は、決して「うつ」の方の悩みを軽く扱う目的のものではないことは、内容と、筆者のプロフィールからお分かり頂けるかと存じます。

 「うつ」という表記を、自らは縁遠いもの、あるいは見たくないもの、と無意識にお考えの方、あるいは、重いテーマ(事実重いのですが)と敬遠される方にこそ読んで頂きたい、という、筆者の“う”あがりOLさんと私との意図から、この言葉遣いとタイトルが生まれました(発案者は筆者ご本人です)。

 「軽く見ているのでは」という誤解が生じることを覚悟しても、多くの方に、広く読んで頂きたい、という方を優先しました次第です。

 なぜか。それは、私を含め、NBOを読んでいるほぼすべての方に、「う」のリスクがあるからです。山は、体も心も無事なまま麓まで降りなければ登山ではないけれど、こと仕事という山については、下山を容易に肯んじない雰囲気がこの国に、そして我々の中にある。その環境下で「うつ」に目をとめて頂くには、入口をよほど広くしておかねばならない、と思った次第です。

 ★そんな大げさな、と思われた方は「お父さんが「眠れない」のは、心の問題ではない 」をぜひお読み下さい。

 このご説明は、さらに詳しく筆者から連載第1回(リンクはこちら)でさせていただきましたが、回数を重ね、はじめてお読みになる方が増えてきたことに鑑みまして、再度お知らせします次第です。うっかり気づかずにいた私にご指摘、ご質問をして下さった皆様に、御礼申し上げます。(Y)

(前回「『好きなことをやりなさい』と言われても、思いつけないのが『う』なのです」から読む)

 「う」の湯のドロに漬かっていると、外から声が聞こえてきた。

「頑張れー!頑張れー!」

 同僚の声に似てるような気がする。私だって頑張りたいのはヤマヤマだ。でも、身ぐるみ剥がされて、この湯に放り込まれて…。こんな状況でどうやって、何を「頑張れ」ばいいと言うの?どうしよう?どうしよう?

「いつ出てくるんだー?いつまで休むつもりなんだー?」

 今度は上司の声に似てる。いつココを出るのかって?そんなのコッチが知りたいくらい。知ってる人がいるなら教えてほしい。私はいつになったら、ココを出られるの? 誰か助けて!

 こんにちは、「う」あがりOLです。

 「う」の湯モノローグ、困惑を表そうとしたのですが、ちょっと病的な感じがしちゃいますでしょうか? 病気だから仕方ないのですが、このくらいのことは日常よく考えていました。「誰か助けて!」と。

 で、実に面倒くさいことに「助力」のつもりの言葉が、助けにならなかったりするのですね、この病気。「う」こと、うつ病の患者さんには「頑張れ」と励ましてはいけない、と聞いたこと、きっとあると思います。

 冒頭のように実際、ワタシも「う」の湯につかっているときに、友人から

「がんばっ…、あっ、コレ言っちゃいけないんだね」

 と言われたことがありますが、そのとき既に「回復期」に入っていた私は

「いいの、いいの、私はいま頑張らなくちゃいけない時期なの」

 と、答えました。
 そう、それは、うつ病の病状の時期によって違うのです。

 うつ病には、はじめ「急性期」と呼ばれる薬物治療中心の治療期があります。

 この時期は、ぐっすり眠れなかったり、症状が安定しなかったりと、状態がよくありません。それだけに、この時期に「頑張れ」と言われても、患者は自分では自分の症状をどうすることもできないため、「せっかく励ましてくれているのに、頑張れない自分はダメな人間だ」と自分を責めてしまったり、あきらめの気持ちが起こるなど、かえって症状を悪化させることになりかねません。だから「頑張れ」と言ってはいけない、とされているのです。

「なんでそこまで気を使うの」と思う方は

 …めんどくさいですか?
 めんどくさいですよね。そもそも言う側には悪意なんて欠片もないんだから、そんなふうに受け止められても…って思いますよね。

 ちなみに私自身はこの時期に、
「病は気から、と言うじゃない」
 と、知人に言われて途方に暮れました。

 その“気”の部分が病気なんだから、どうすることもできない。“病は気から”と言われても困るだけ、気軽に言わないでほしい、と落ち込んだのを覚えています。

 ええ、これじゃ私の方が揚げ足を取って絡んでいるみたいですよね。相手が励ましの気持ちでいってくれていることも分かる。でも、そもそも「う」、それも急性期は、自分で自分の状態を持て余しているのですから、理性では判断できても、心の方はイタい。

 この辺に「う」の人に言葉をかけるときのポイントがありそうです。
 つまり「自分自身ではどうしようもないこと」については、触れない。

 逆にいいますと、もしそういう対応が「めんどうくさい」とお思いになったら、「う」の人には何も言わない方がいい、とも思います。そのほうがきっと、彼・彼女さんの助けになる。

 でも、知人、友人、身内だったらどうやってでも励ましたいですよね。そこで今回は、「う」の湯の中に届く「言い換え」を考えてみたいと思います。

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著者プロフィール

“う”あがりOL(うあがりおーえる)

仕事大好き女子だった雑誌編集部時代に働き過ぎて“う”を発症。「まさか、私が?冗談でしょ?」と驚きつつ、どっぷり“う”の湯に浸かり休職。リワークプログラムに通って昨年9月に職場復帰するも、いまも再発が怖い小心者のOL。趣味は書道、中国語。座右の銘は「七転び八起き」。



このコラムについて

“う”あがり美人になりたくて

 厚生労働省の患者調査によると、2008年10月の時点で「うつ病」患者数は104万1000人と、100万人を超えました。身近なわりに軽く扱える病気ではないし、患者、周囲ともに誤解も多いのが“う”です。個々の状況に応じて考えねばならない事も多い。それゆえ、総論として語るより、個人の体験としてお話しする方が、それも、本人ゆえに許される範囲で、深刻になりすぎることなく、できることなら笑って読んで頂けるようなしつらえを考えました。それが「“う”あがり美人」、というわけです。
 湯に入って出てきて「美人」にまでなったかどうかには実は自信はいまいちありませんが、とあるOLが、うつという病気にかかり、復職するまでの経緯と、それを通してこういう考え方もできるようになった、そのひとつの実例として、読んで頂ければ幸いです。

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