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男性は女性のうちに「自分自身にとっての母親」をみいだす

わたしは愛する【8】

2010年8月19日(木)

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エディプス・コンプレックスの崩壊

 このとき少年は重要な局面に直面する。自分が父親と同じ立場に立って、母親を愛そうとすると(これは男性的な方法だ)、父親が邪魔になるが、父親を排除しようとすると、ペニスを奪われるに違いない。あるいは少年は母親の立場に立って、父親から愛されることを望むことができる(これは女性的な方法だ)。しかしその場合には母親と同じようにぺニスを奪われるに違いない。女性はペニスのない存在だからだ。

 どちらにしても「エディプス・コンプレックスに基づいた二つの性的な満足の享受の可能性は、両方とも失われる」[1]のである。「男性的な方法では処罰によってペニスを失い、女性的な方法ではそもそもペニスはもてないのである」[2]。どちらを選択することもできないために、少年は自分のエディプス的な欲望に目をつむる。ペニスを守りたいというナルシシズム的な関心が勝って「子供の自我は、エディプス・コンプレックスから目を背けるのである」[3]

 こうして性の潜在期が訪れる。ペニスは守られるが「同時に性器は麻痺し、その機能は発揮できなくなる。……そして子供の性的な発達は中断されるのである」[4]。この長い潜在期のうちに抑圧が進むために、子供の最初の性的な選択は価値の低いものとなり、たんなる「情愛の流れ」[5]を形成するにすぎないものとなるとフロイトは考える。母親にたいする親愛の情や父親にたいする尊敬の念などは、こうした対象選択の残滓だというわけである。

 「思春期の対象選択は、幼児的な対象を放棄して、〈官能の流れ〉として、新たに再開する必要があるのである。この二つの流れが合流しない場合には、性生活の理想の一つ、すなわちすべての性的な営みが、一つの性対象に統合されるという事態が成立しえないことが非常に多い」[6]とフロイトは指摘する。

思春期の対象選択

 ということは、思春期にはエディプス・コンプレックスの崩壊の帰結をやり直すということである。「幼児の両親への愛着は、思春期に新たな復活する」[7]のであり、思春期には異性を欲望の対象として選択されることが多い。その選択はエディプス・コンプレックスを再現する形で行われる。

 少年は母親を手本として女性を対象として選択する。エディプス・コンプレックスの教訓が教えたことは、母親をそのまま性的な欲望の対象とすることはできないこと、しかし父親の立場に立って、母親を愛することは可能であり、父親と同一の存在になれるということである。女性を愛し、子供を生めば、かつて憧れた父親とおなじ立場に立てるのである。

 少女の場合には、最初の愛着の相手が母親でありながら、性的な欲望の対象を一度父親に転換しなければならないという問題が発生するので、エディプス・コンプレックスの解消は一筋縄ではゆかないし、さまざまな議論が錯綜している。ただし結局のところは女性もまた、父親と結ばれることはできないことを学び、かつての母親と同じ立場にたって、男性を愛することで、父親に愛されるというかつての欲望を満たすことができるとされているのである。

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「男性は女性のうちに「自分自身にとっての母親」をみいだす」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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