人類はこの1万年というもの加速しながら、そして今この瞬間も、生物として進化し続けている。これがこの本の骨子である。
他の生物同様、人類も長い年月をかけて進化してきた。猿人から原人、ネアンデルタール(旧人)、そして現在の我々(現生人類)へ。この間、骨格や脳の大きさなどの体格面とともに、「道具や火の使用・言葉の獲得・死者の埋葬」といった行動面、思考面でも大きな変化があった。
といっても、中にはこう思っている人も多いかもしれない。
「生物の進化というのは、とても長いスパンで起きるものだ。人間がそれらしくなってからせいぜい5万年。石器時代も今も、使う道具が違うだけで人の中身は変わらない」と。
これはつまり石器時代の赤ん坊を現代に連れてきても、ちゃんとした現代人に育つということだ。しかし、この本は遺伝学の立場からその見解に異を唱える。
「現代人は、古代エジプトの人間と比べてもかなり違った生物になっている。進化の速度が自然界の生物とは比較にならないほど速いのだ」と。
進化を加速させたネアンデルタール人との交雑
ではなぜそんなに進化が激しくなったのか。
進化には、「個体(人口)の多さ」と「遺伝子の混合の速度」が大きく影響するが、人類には、他の生物にはない「都市・戦争・征服」といった特殊要因があり、それがこの2条件を促進させた。
また、「適応への圧力要因」もある。イヌやウシなどの家畜は、人為的な交配により自然状態よりもずっと早く色々な品種に分化させられた。これは、種に、強い適応圧力をかけたためであるが、人類にも同様の進化への圧力・要因といったものがいくつも存在した。「ネアンデルタール人」「農業」「ミルク」「ユダヤ人の例」である。
人類学者に言わせると、現生人類における最も根本的な行動の変化は、旧石器時代後期、3万〜4万年ほど前に生じたとされている。人類がアフリカからヨーロッパに到達したタイミングだ。
ここにおいて初めて、「絵画、彫刻、弓矢、釣針、網、炉、陶器の人形、交易、儀式、頑強な住居」という、いわば「創造と発明」の花を大きく咲かせる。この変化はとてつもなく大きく、それまでとは比較にならない断絶があるという。「iPad」 の出現どころではないのだ。
ではなぜその時代、そんなことが起きたのか。著者はその理由を急激な遺伝的変化に――単刀直入に言うと、現生人類とネアンデルタール人とのセックスに求めている。ここは誤解を招きやすいところだが、「ネアンデルタール人の方が進んでたので、くっついたら進化した」という単純な話ではない。
ある遺伝子がどんな環境においてその力を発揮するかということについては、一筋縄でいかないメカニズムがある。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。











