日直のボウシータです。
先週書いたとおり、今年の夏は某自治体の依頼で、「文学作品とその映像化」にかんするお座敷をつとめた。
そうしたら、更新した数時間後に、漫画家でアニメーション作家の今敏監督の訃報を目にした。
なんということか。今年つとめたお座敷では、先週ここで取りあげた成瀬巳喜男の『放浪記』(林芙美子原作)と『流れる
』(幸田文原作)を含む6本の原作つき映画について話をしたのだが、その中の1本が今敏の『パプリカ
』(筒井康隆原作)だったのだ。
『パプリカ』はあの上等で突拍子もない原作をみごとに映像にしたと感心させられる1本。『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ
』などの傑作を生んだ、才能と心意気の映像作家の早すぎる死を知って、私は寂しい。
悔しいから今週は、今監督とはなんの関係もない話題について書く。書いてやる。
* * *
でやっぱり、先週触れた『放浪記』の話なのだが、すでに述べたとおり、この映画の脚本は、林芙美子の『放浪記』の直接のシナリオ化ではなく、それをもとに菊田一夫が脚色した舞台脚本を、井手俊郎と田中澄江とがさらにアレンジして脚本にしたものである。原作にないものがいろいろ出てくる。
その最大のものが、原作刊行後の作者の人生を描く終盤の部分だ。
『放浪記』が《新興文學叢書》から刊行されると、一躍話題のベストセラーとなった。その刊行記念パーティの場面が印象的だ(因みに私はいままで刊行記念パーティなんてやったことがありません)。
映画のなかで主人公(高峰秀子)はふたりの文学者との同棲に破れ──伊達春彦(仲谷昇)には二股かけられ、福地貢(宝田明)はDV──、印刷工の安岡信雄(加東大介)には好意を寄せられるが彼女の心は動かず、『放浪記』刊行の少し前に画学生・藤山武士(小林桂樹)と知り合う。作中、藤山は戦後までずっと主人公を支えつづけるのだが、これはじっさいに林を支えた手塚緑敏(まさはる)をモデルとしている。
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