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石垣島でラー油を売る「ペンギン夫婦」

2010年9月6日(月)

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 国の過疎集落研究会の報告によると、全国には6万2000もの過疎集落が存在している。そのうち、10年以内に2600集落が消滅する可能性があるという。「古老が1人なくなることは図書館が1つ消えること」。アフリカの古い言い伝えにあるように、それぞれの風土に寄り添い、作り上げてきた生活の知恵や文化が消え去ろうとしている。

 瀬戸際に立つ辺境。だが、時代に抗い、輝く人々は現実にいる。東京農工大の客員教授、福井隆氏はこういった“辺境で輝く人々”を目の当たりにしてきた。

 福井氏は年間250日以上、過疎集落に足を運ぶ「地元学」の実践者。これまで7年間、100カ所以上の現場で地域づくりの支援をしている。「地元学」とは、無い物ねだりではなく、今あるもので何ができるかを考える。そのプロセスを通して地域を元気にしていく学問である。

 多くの地域は「ここには何もない」と誇りを失っている。だが、それぞれの足元を見つめ直すことで、「何もない」と言われているところでも、未来への希望を作ることができる。地元学を通して、福井氏は地域住民に気づきを与えている。

 日本中を旅する「風の人」。ゆえに見える地域の未来。この連載では、辺境で力強く輝く人々を福井氏の目線で描く。地域を元気づけるにはどうすればいいか。住民の心に火をつけるにはどうすればいいか。集落に溶け込むにはどうすればいいか――。1つのヒントがわかるのではないだろうか。

 1回目はラー油ブームの火付け役、「辺銀食堂の石垣島ラー油(登録商標5139092号)」(以下 石垣島ラー油)をヒットさせた石垣島の辺銀夫婦の物語。現場に足を運び、人間関係を通わせた著者だからこそ書ける視点を見ていこう。

 一言で言えば、心を犠牲にしない金儲けということだろうか。それは、ストレスフリーな仕事場づくりと言い換えてもいいだろう。

 石垣島では、石垣島ラー油が誕生して10年。その間に、22社ものラー油を製造、販売する企業が誕生した。島の食材である島唐辛子、島胡椒、石垣の塩などを利用した商品、ジンジャーエールやドレッシング、ケーキなどのご当地商品もたくさん開発され、販売されている。八重山地方だけではなく、沖縄本島にまでラー油のブームは拡大、推定で150種類もの後追い商品が誕生した。

「石垣島ラー油」のペンギン夫婦

 島で生産される島唐辛子の価格は、10年で約10倍もの価値を持つようになった。島を訪れる観光客は平成20年度で78万人と推定されている。その人たちが1人1本購入したと仮定すると、約6億円の経済効果をもたらしていることになる。最近では食べるラー油のブームが全国的に拡大し、カルビーとのコラボレーション商品「石垣島ラー油味のポテトチップス」が全国発売されるまでになった。

10年目のラー油づくり、最初から一緒の左から、マチ子ネーネ、立美ネーネ、辺銀愛理さん

 ラー油ブームの火付け役となった「石垣島ラー油工房」を取り仕切る“マチコネーネ”は言う。

 「楽しいですよ、毎日が楽しくって、仕事に行くのが楽しみよ~。楽しくて、楽しくて、やめられません。素敵な仲間たちでしょう、本当に仲がいいんですよ」

 大人気のラー油工房、その作業の様子を見ていると、すべてが阿吽の呼吸で動いている。しかも、驚くことに、毎日の生産ノルマを設定せず、明日誰が職場に来てくれるかもわからないというスーパーフレックス制を敷いている。商品を手に入れるのに一年待ちと言う大人気商品、この工房では自然体で淀みのない川の流れのように商品ができあがっていく。南の島のものづくり、それは島の流儀を大切にしたものづくりである。

 この人気の石垣島ラー油は、「辺銀」と書いて「ペンギン」と読む夫婦が生み出した、全く新しい食べるラー油である。暁(ぎょう)峰(ほう)、中国西安生まれ、愛(あい)理(り)、東京生まれ。12年前石垣島にアイターン、はるばる東京から知り合いもいない南の島へ移り住み、夫婦で油を売って生きている。そして、大きな地域活性効果を島にもたらした。日本全国で、「食べるラー油」ブームが湧きおこっている。辺銀夫婦はその震源と言っていいだろう。

八重山の心がいつの間にか1つに

辺銀愛理さん、暁峰さん夫婦

 すべては信頼関係が基本。それは自然体で尊敬できるマチ子ネーネがすべてを取り仕切ってくれるからできること。「私たちは、広報とものづくり、それ以外はみいんな任せた」。そう、渦ができるように、八重山の心がなんだか知らないうちに、ひとつになった。いやほんとに、これで良いのかと言ううちにみんなが助けてくれ、気持ちが繋がっていった。都会の人達がそれに交わり、渦が大きくなっていった。

 島のオバアは、苦しみを知る人。「そこに住む人たちから、場所を分けていただいた。私たちは、それがうれしい。だから、この島に恩返しをしたい」。島のネーネが束ねてくれる。「この人以外にいない」。最高の人。だから、辺銀夫婦は、今ここで生きている。生きていくことを決めた。

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川野 幸夫 ヤオコー 会長