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「父親」を求める中二のオレらと、「ガールズ」の行く末

2010年9月3日(金)

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 民主党の代表選挙を、ニュースショーのキャスターは、真面目に取り合おうとしない。
 斜め上から、一段見下した態度で処理している。
「まったくどういう了見なんでしょうかね」
 と。
 コメンテーターも苦笑い。
 幼稚園児の兄弟喧嘩を眺める近所のおじさんぐらいな目線だ。
「困ったものですね」
 にやにや。

 新聞も醒めている。
 たとえば9月1日付けの朝日新聞の見出しはこうだ。
「推薦人、菅氏に7閣僚の名、小沢氏は「ガールズ」3氏も」
 ごらんの通り、「ガールズ」という軽佻な単語を、カギ括弧付きで使用している。
 しかも『「ガールズ」3氏』という言い方で、推薦人の軽量ぶりを揶揄している。
 語法としては「お犬様」と同じ。単語と敬称の間のギャップを半笑いで処理するカタチだ。

 単純に言って、失礼だと思う。
 「ガールズ」の一人として分類統合された個々の女性議員ご本人たちに対して失礼なのはもちろんだが、この言い方には、かなりあからさまな女性蔑視が含まれている。
 いや、発言者が女性蔑視を意図してこの言葉を使っているのでないことはわかっている。ただ、しゃれた言い方をしてみせたかっただけなのだと思う。「アイロニカル」ぐらいなつもりの。噴飯だけど。

 とまれ、結果として、「ガールズ」は、若い女性が政治を担うことを嘲笑する文脈を形成している。
「こんな小娘どもに政治ができるのか?」
 という感じ。
 失礼であるのみならず、用語の暴力ですよ。これは。どうして取り上げて問題にする議員がいないのか、私にはそこのところがわからない。

 政治を扱う記事の中で「ガールズ」という言葉を選ぶセンスは、少女アイドルを喫茶店のモーニングサービスになぞらえて、「娘。」と名付けたプロデューサーの感覚に近い。一山いくらの束売りのアイドル。コーヒーのおまけのトーストと目玉焼き。歓談のついでに食い散らかすぞんざいな朝食としての皿盛り。そういう扱いのタレント群。そして起立ボタン押し要員としての顔のない議員。ロボットと一緒。明らかに軽んじています。

 この種の見出し用語を発明するのは、新聞社のデスクだと思うのだが、ということはつまり、彼らのアタマの中には、古き良き時代の選良としての古色蒼然たる政治家像が居座っていて、彼らジャーナリズムの世界の男たちは、若い女性が選挙に出ることや議事堂に登院することに、依然として強い抵抗を感じているということなのだろうか。

 おそらく然りだ。
 政治記者はいまだにエリート意識を捨てていない。
 彼らのアタマの中では、政治家が特別な職業であるということと、政治を取材する自分の仕事が選ばれた人間に課せられた崇高な任務であるということが等価になっている。だから、昨日まで柔道着を着て汗をかいていた女子選手や、Vシネマの画面に出没していた女優さんが議員バッチをつけている姿を見ると、自分の仕事の価値が貶められたような感慨を抱くのである。で、彼らは、若い経験の少ない議員を「チルドレン」と呼び、女性議員を「ガールズ」と名付けて、昔ながらの由緒正しい議員先生と区別しにかかっているわけだ。

 とはいえ、新聞記者が若い政治家を見下しているのが事実であるのだとしても、それだけでは、「ガールズ」という呼称がここまで執拗に使われている理由にはならない。
 おそらく、「ガールズ」「チルドレン」という言葉が定番の用語として人口に膾炙した背景には、読者の側の支持ないしは共感があずかっている。つまり、マスメディアが一年生議員や女性議員を「チルドレン」「ガールズ」と呼んで軽んじているのは、われわれ一般の日本人が、政治家に「父親像」を求めていることの裏返しなのだ。

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「「父親」を求める中二のオレらと、「ガールズ」の行く末」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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