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大失敗の末に勝ち取った『歴史を動かしたプレゼン』
~説得と納得は、似て非なるもの

  • 大塚 常好

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2010年9月6日(月)

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歴史を動かしたプレゼン』林 寧彦著、新潮新書、714円

 スティーブ・ジョブズは、カッコいい。

「今日、アップルは電話を再発明する」
「iPodはガムより小さくて軽いんだ」

 プレゼンでそんな名フレーズを繰り出し、聴衆を前に話す心構えは「救世主的な目的意識を持つ」「禅の心で伝える」というのだから、もうレベルが違う(『スティーブ・ジョブズ――驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』日経BP社より)。卓越したプレゼン術は、世界中のビジネスマンが認めるところだろう。

 しかし、スティーブ・ジョブズに我々がなれるわけではない。

 それと同じように、本書『歴史を動かしたプレゼン』に書かれた、コロンブス、大黒屋光太夫、クーベルタン男爵などの先人たちが、国王や皇帝などを相手に披露したプレゼンの極意をサル真似してもあまり意味がない。

 むしろ参考になるのは、彼らの失敗談だと思われる。

 博報堂で長年、広告キャンペーンやテレビCMの企画提案をしてきた百戦錬磨の著者が、そんな偉人たちの壮大な「プロジェクト」を史実や資料をもとに解剖した本書の一番の読みどころは、彼らがいかに「挫折」乗り越えたかを描いた部分だ。

自分が快感を覚えるプレゼンは赤信号

 例えば、1500年前のイベント「オリンピック」を復活させたフランス人教育者で貴族出身のクーベルタン男爵(1863年~1937年)である。

 失敗した1回目のプレゼン。自身が会長を務める「フランス競技スポーツ協会連合」の式典で、国王・上級階級の人々を前に高らかに謳いあげたのが、〈スポーツ交流を通じて世界平和を実現するのだという、自分の使命〉だった。

 まあ、お粗末だったのは、いつ、どこで、誰が、どのようにという告知の基本情報が欠けていたこと。コンセプトや夢だけを語り、具体的なアイデアやスケジュールなどのプランがすっぽり抜けてしまったのである。

 それはともかく、著者が最も強く指摘しているのが、プレゼンは「相手が主」であるという鉄則にクーベルタンが気づいていなかったことだ。スピーチ中に、いつしか主人公は「スポーツで世界平和を願う」自分になってしまった。

 著者は自身の体験も踏まえこう説明している。

〈プレゼンしていて、喋っている自分が快感を覚えるときは気をつけたほうがいい。いわゆる「自分に酔っている」状態で、相手がついてこないことが多いものだ〉

 ビジネスシーンでも、立て板に水のトークは耳には心地いいが、最終的に心に何も残らないことがある。プレゼン後の質疑でも、まるでその質問を想定していたように、すらすらと上手に回答する。だが、それは時に、「きちんと受け止めていない」と聴衆側に感じさせてしまうリスクがある。

 少しぎこちなくても、相手と会話する感覚で進めていくほうがかえって成功につながることがある、と著者は指摘している。

「根回しがゼロだった」こともクーベルタンの失敗の原因だった。

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