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スラム化するデジタル世界で「フォロワー」を数える

2010年9月10日(金)

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 私のところには毎日200通近い数のメールが来る。
 が、ほとんどはスパムだ。宣伝と詐欺。釣り針、誘惑、思わせぶり、おためごかし、アジテーション、連呼。送られてくるメールの98%は、その種の商業目的の迷惑メールなのだ。

 無視すれば良いのはわかっている。でも、簡単には無視できない。
 理由は、ゴミの山の中に宝物が隠れている可能性があるからだ。なに、ごくわずかだが。
 私はそのコンマゼロゼロ何パーセントの可能性を捨てることができない。届くはずのない年賀状(だって、自分が出してないんだから)を確認するために、毎朝玄関のポストを覗いていた中学生の頃から、心の成長が止まっているのかもしれない。

 GmailやHotmailの類を勘定から外すと、私は3つのメールアドレスを持っている。
 その3つのうちで最も古いアドレスが、私にとって一番愛着のある奥座敷なのだが、それは同時に、スパムの巣になってもいる。1998年にホームページを開設した時、ネット上にモロな形で公開してしまったのが良くなかったのだと思う。とにかく、以来、私の伝統あるメアドは、日々刻々ネット上を巡回するアドレス収集ロボットに登録され、毎日信じられない量のエロメールを誘引しつつ、現在に至っているのである。

「廃棄したらどうです?」

 とアドバイスしてくれた先人もいる。古手のネットユーザーにはデビュー当時のアドレスを廃嫡した人が多いのだそうだ。というのも、ネット参入初期に入手したメアドはどうしたって「汚れて」くるものだからだ。

 古いアドレスは、多くの場合、メールアドレス収集ロボットの餌食になっている。ウェブ上に公開した過去があったり、ネットオークションの連絡先やソフトウェア購入の際に記入したアンケートの送り先に指定していたり、知り合いの誰かがウイルスにひっかかってアドレス帳を盗まれたりしているからだ。だから、そういう悪い虫のついたアドレスはいっそ火葬処分して、新しい手付かずのメールアドレスに乗り換えるべきだ、と彼は言うのだ。大切な知り合いにはメアド変更のメールを送っておけばOK。ついでに、仕事用のアドレスとプライベートのアドレスを分けると良いですよ、と。なるほど。オレの段ボールハウスはリフォーム不能なわけだな。ガソリン散布以外の方法では。

 が、古い家は古さゆえに捨てられない。文化財だからだ。古いアドレスには古い友人がぶら下がっている。そして、古いつきあいは古い仕事と分離不能になっており、それら旧弊な時代とつながっている年配の知人の中には、メアドの変更を承知してくれない頑迷な人々がけっこういるのだ。というのも、私のような人間と20年以上にわたって連絡をとり続けるためには、ある頑迷さが不可欠だからだ。

 でなくても、古い著書やウェブ上のソースをたぐってメールを書いてきてくれる人たちは、どうしてもあの一番古いアドレスに固着しがちなのだ。とすれば、どうして最古のアドレスを捨てることができる? 古い毛布には古い愛着がしみついている。他人にとっては不快な体臭でしかないのだとしても。

 で、私は、その大切なアドレスに襲いかかるスパムメールを仕分けするべく、強力な迷惑メール遮断機能を備えた高機能メーラーを導入している次第なのだが、迷惑メールフィルタの識別能力と迷惑メールのフィルタ回避戦術は、当然のことながら、いたちごっこを形成している。それゆえ、受信フォルダには、私に金を払うつもりでいる熟女やちょっとセンチメンタルな気分のOLが、フィルタの検閲の網をくぐりぬけて、今日も熱いメッセージを届けて来るのである。

 が、それはたいした問題ではない。毎日百数十通のスパムメールをきちんと迷惑メールフォルダに振り分けてくれているメーラーの仕事を、私は高く評価している。とてもじゃないが、あんな作業を手動でやれるとは思えない。二通や三通の検閲漏れがあったからといって見捨てるつもりはない。

 むしろ問題は、判別フィルタが、本物のメールを「クロ」と判定してしまうケースがあることだ。
 もちろん、レアケースだ。
 でも、事実、私は、この5年ほどの間に5通ほどのプライベートなメールを「迷惑メールフォルダ」から救出している。うち2通は、かなり重要なメッセージを含んでいた。

 ふだん、私は、迷惑メールが3000通か5000通に到達した段階でフォルダの中身を整理する。その際、廃棄に先立ってざっとタイトルと差出人をソーティングした上で、目を通すことにしているのだが、それだけの作業に、どうしても、10分かそこいらはかかる。

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「スラム化するデジタル世界で「フォロワー」を数える」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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