「電書革命」

「マイナーであればあるほど、モノは売れると思います」

“電書部”米光一成氏דインコ編集長”タカギタイキチロウ氏対談 その1

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2010年10月1日(金)

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 2010年は電子書籍元年と言われていますが、商業出版としての電子書籍はまだ手探りの状態です。そんな中で独走状態にあるのが、立命館大学映像学部の米光一成教授発案の「電書部」活動。「文学フリマ」での出店で大盛況を納めた後(詳細は「5時間で1400部以上売れた電子書籍」をお読みください)、7月に渋谷のカフェで開催した「電書フリマ」では5206冊もの電書が売れました。

 今回の「電書革命」対談は、「新しい編集者」というキーワードで、電子書籍のさらなる可能性について考えてみたいと思います。

 「新しい編集者」というのは、米光教授の言葉ですが、「集めて」「編む」という、根源的な役割を持つ人のことを指しています。

 この時、米光教授がいつも引き合いに出すのが、“インコ編集者”こと、タカギタイキチロウ氏。インコ編集者とは、要するに、インコが大好きな人たちの“集まり”を“編む”人。

 ソーシャルネットワークを存分に生かした、インコを中心としたコミュニティーづくりからは、新しいマーケティングや流通の可能性も見えてきます。

 

―― 米光さんの電書部の活動である「文学フリマ」への出店、「電書フリマ」は2回とも大盛況でした。3回目の予定はあるのですか?

米光 この間、池袋の西武百貨店の屋上に、パソコン1台持って行って、プチ電書フリマをやったんです。その場に来ている著者の分だけ販売するという形で。今はそれぐらい軽い感覚でできちゃう。秋冬は「電書フリマ55」というタイトルで、いろんなところで、いろんな人が、電書フリマを55回やるって感じにしたいと思っています。

 電子書籍で読むものがないから何となく買いにくるというよりも、テーマをしぼってこういう内容ならぜひ読みたい参加したいという方向にシフトするほうがいいと考えています。

―― 電子書籍好きの人が「どんなものだろう?」という興味で買いに来る段階はもう終わったということですね。

米光 次の段階に進みたい。そこで、今日は、僕がいろいろなところで新しい編集者像として語っているインコ編集長のタカギタイキチロウさんと、電書のこれからを語り合ってみたいと思います。ところで日本の“インコ人口”って何人いるの?

インコ編集者、誕生秘話

タカギ 僕の試算では、インコを飼育しているのは約90万世帯ですね。

米光 そんなにいるの?

タカギ タイキチロウ
1975年生まれ。兵庫県芦屋市出身。日本大学藝術学部放送学科中退。競輪の予想屋見習いなどを経て、2001年、映像制作会社「グループ現代」に入社。ディレクターとして教育ビデオ、テレビ番組などを手がける。2010年6月退社。インコ評論家、小鳥モノづくり集団“pico”編集長として独立。10月初の短歌集「不義理なインコ」を電書で出版。秋にはCGM型電子書籍「電書インコ」を制作予定。ツイッターアカウントは、@taikichiro
(写真:やぎさやか)

タカギ セキセイインコに限るともっと少ないと思うんですけど、インコって、オカメインコとか、コザクラインコとか種類がいろいろいるので、ペットにおける鳥類を飼っている人の割合に基づいて試算すると、インコ世帯は100万いくかいないかぐらいだと思います。

米光 電書の『季刊インコ』の可能性があると前から思っていて、いろいろなところで勝手に「『季刊インコ』を作ればいいのに」と言っていたんです。

―― なぜ、電書なんですか?

米光 「季刊インコ」が成り立つなら紙の本でも全然いいんだけど、装置産業としての出版でやるのは難しそうでしょ。

タカギ 本屋に行くと犬や猫の雑誌や書籍はたくさんあるのにインコはほとんどない。『コンパニオンバード』という専門誌はあるけど、普通の本屋さんには入ってないですね。

米光一成(よねみつ・かずなり)
1964年12月22日、広島生まれ。ゲーム作家。立命館大学映像学部教授。ライター。『ぷよぷよ』『BAROQUE』『eMotion e-Mail』『おえかきでドン』等、ゲームの企画監督脚本を多数手がける。「POPEYE」「リバティーンズ」「月刊Gファンタジー」で連載を持ち、ライターとしても幅広く活動中。西武池袋コミュニティカレッジ「米光一成の文章力道場」講師、宣伝会議「編集ライター講座上級クラス」講師などを務め、表現力、発想力を鍛えるための教育活動に取り組んでいる。電子書籍に強い関心を持ち、『電書部』を立ち上げた。米光一成ブログ『こどものもうそう』。ツイッターアカウントは、@yonemitsu
(写真:やぎさやか)

米光 インコ編集長がインココミュニティーを作って、『季刊インコ』を出すというやり方は、今までなかったので、いいかな、と。タカギさんみたいな個人と、電書の相性は、ばっちり合うなとずっと思っているんです。

タカギ いろいろなインタビューで「季刊インコ」って言葉を見かけるたびに、プレッシャーを感じていました。

米光 「インコ」というテーマができると、今度は電書フリマじゃなくて、インコフリマなんですよ。インコ好きが集まって、そこでインコの情報を交換したり、インコの写真を撮ってきたのを見せ合ったりの中の1つとして電書があるとピッタリだと思う。

 今はまだiPadを持っていない人もたくさんいるから、紙の方が便利かもしれない。でも紙だとコストがかかっちゃう。電書を読むデバイスが広まってくれたら、電書をコミュニーティーの情報の軸にできる。

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著者プロフィール

深川 岳志(ふかがわ・たけし)

1960年、大阪生まれ。関西学院大学社会学部卒業。ワープロ雑誌の編集プロダクションを経て、フリーライターに。著書は『プログラマの秘密』『プログラマの憂鬱』(ビレッジセンター)ほか。主にパソコン雑誌、IT系ニュースサイトに執筆。現在はPConlineに「Google探検隊」、「Macを買ったら絶対入れておきたいオンラインソフト」を連載中。



このコラムについて

電書革命

iPadやキンドルなど、新しいデバイスの登場で電子書籍が注目を集めている。そんな中で、まったくの手作りの電子書籍が文学愛好家が集う「文学フリマ」で画期的な売り上げを記録した。たった5時間の即売会で売れたのは1400部以上。同人誌即売会としては画期的な数だ。仕掛け人の米光一成立命館大学映像学部教授とエンジニアの松永肇一氏の2人に電子書籍をあえて「電書」と呼ぶ。文学と本を愛する2人に、5回にわたって電子書籍と“紙の本”の明るい未来について熱く語り合っていただいた。

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