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「尖閣」で考えるぼくたちの「公」と「私」

2010年10月1日(金)

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 尖閣諸島をめぐる政府の対応は、あれで良かったのだろうか。
 むずかしい質問だ。
 脊髄反射で正直な気持ちを申し上げるだけなら話は簡単。あんな処置で良かったはずはない。
 現に、こうしてこじれているわけだし。

 とはいえ、それでは、ああする以外により良い対処法があったのかと真顔で問われると、ちょっと困る。
 うまい手が思いつかないからだ。
 もちろん、後知恵で何かを言うことは可能だが、そんな言葉に意義があるとは思えない。第一、卑怯だ。
 いずれにせよ、「正しい対処法」を提示することは私には無理だ。

 これは、唯一の正解が存在するタイプの問題ではない。
 あまたある不適切な解答のうちのいくつかが、条件次第で正解の近似値に到達する可能性はあるだろうが、その場合も、結果は運任せだ。本当にうまくいくのかどうかは、やってみるまでわからない。つまり、正解は歴史だけが知っているということで、事実上誰にもわかりはしないのだ。

 この種の問題(目に見える「国益」よりも、まず「国威」が表に出てくるタイプの課題)を評価するためには、いくつかの異なった視点と、次元の違う物差しが必要になる。
 具体的には「どの立場から見てどう見えるのか」を、経済的に、政治的に、外交的に、あるいは軍事的にそれぞれ別々な基準で評価せねばならない。しかも、そのいちいちについて、当面の波及効果と中長期的な影響をこれまた個別に考慮する必要がある。

 非常に面倒な作業だ。
 ある方面で正解とされる答えは、別の視点で評価すると問題外になる。全面的な正解はどこにも存在しない。
 この種の課題において、特定の局面に特化した専門的な観察は、往々にして大局を見誤らせる。
 また、短期的な整合性にこだわると将来に禍根を残す結果を招きかねない。
 といって、急場の判断において大局にとらわれていると、二度と来ない機会を喪失することになる。

 現状、日中両政府にとって、尖閣諸島問題は「国益」を云々する以前に、何よりもまず「政権の命運」を決するスイッチとして目前に立ち塞がっている。
 交渉の落しどころ(短期、中長期、将来のそれぞれについて)自体は、当面の課題としては重要性を持たない。日中両政府の首脳とっての火急なのは、一連の外交過程を、自国の国民がどんなふうに見ているか、だ。

 対応を誤ると、命取りになる。支持率が急激にダウンして政権が持たない。だから、彼らは背中に世論の刃先を感じながら交渉に臨んでいる。
 つまり、この種の外交交渉の最大の動力源は、実は、国益や二国間関係ではないのだ。国際情勢でも論理的整合性でもない。むしろ双方の国の内政問題(政権の安定度や内閣支持率の現状)が最大の焦点になる。換言すれば、領土問題は、第一義的には点数稼ぎの「外交ショー」であり、この場における交渉は一種の社交ダンスみたいなものなのである。うん。言い過ぎかもしれないが。

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「「尖閣」で考えるぼくたちの「公」と「私」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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