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あらゆる文字はGoogleの資産になるのだろうか?

2010年10月8日(金)

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 「3Dテレビ元年」ということが喧伝されはじめる直前まで、2010年が「電子出版元年」と言われていたことをおぼえておいでだろうか。
 結果は、いずれも空振り。モノ離れ元年。特に電子出版元年の方は、iPad(アイパッド)の需要が一巡すると完全に忘れられた。

 なぜだろう。

 電子出版元年報道が羊頭狗肉かつ竜頭蛇尾の様相で推移してきた理由は、おそらく、家電業界が電子情報端末の需要に期待している以上に、既存メディアが電子出版の未来に不安をおぼえたからだ。新聞雑誌およびテレビの皆さんは、活字情報が電子化されることに、本能的な反発を感じているのだ。いや、反発というよりも、より端的に恐怖かもしれない。木の洞から出た尺取り虫がはじめて鳥を見た時の感じ。
「ん? あいつらの口元はなんだかやけに不吉なカタチをしているぞ」

 と、ニュースが入ってきた。

「電子書籍の市場拡大を前に、国内の主要459出版社が加盟する日本書籍出版協会(書協)が書籍の電子化に際して著作者と結ぶ契約書の「ひな型」を加盟各社に向けて作った」(10月6日 asahi.com)というお話だ。

 以下、記事(の一部)を引用する。
《「ひな型」では、出版社は、(1)DVD-ROM、メモリカードなど電子出版媒体に記録した出版として複製し、販売できる(2)インターネットなどを利用し、公衆に送信することができ、ダウンロード配信やホームページに掲載して閲覧に供することができる(3)データベースに格納し、検索・閲覧に供することができる、などとしており、一方で、出版社側の役割りとしては「価格、広告・宣伝方法、配信方法および利用条件などを決定し、その費用を負担する」とある。》(10月6日 asahi.com)

 記事は続けて、この「ひな型」が出版社側に有利で、それゆえ、著作者たちの反発が予想されるとした上で、一方、「ひな型」は、叩き台に過ぎず、加盟各社を縛るものではない旨も併記している。
 煮え切らない記事だ。
 あるいは、煮え切らないのは記事ではなく取材先の方で、記者は、単に煮え切らない状況を描写しているだけなのかもしれない。

 思うに、著者と出版社の間の条件闘争は、そんなに深刻な対立にはならない。互いに相手無しに生きていけない以上、書き手と版元の綱引きは、いずれ落ち着くべきところに落ち着く。一蓮托生だ。
 問題はもっと手前の部分にある。すなわち、この先、著作者と出版社は、どうやって本を作っていくのかというところに、だ。

 私自身の現時点での見通しは、ちょっと悲観的だ。
 はじめて底引き網の網の目から向こう側を覗いた時のヒラメみたいな気持ちと言ったらご理解いただけるだろうか。
「うーん、この不思議な壁の先にはとても厄介な未来が待っている感じがするぞ」
 と、ヒラメは思っている。が、実際のところ、彼の未来は壁の向こう側にではなくて、手前に限定されている。二度と網の向こう側に戻ることはできない。

 流通形態と、読書習慣と、制作過程。
 それぞれに深刻な網の目がかぶさって来るはずだ。
 しかも、一度はじまった変化は、二度と昔には戻らない。
 街からCDショップが無くなり、写真屋が根絶やしになりつつあるのと同じように、この先、書店が少しずつ消えていく中で、本を読むわれわれの読み方も以前と同じではいられない。本を書く人間の書き方も変わっていく。
 で、気がついた時には、あらゆる文字がGoogleの資産になっている――のだろうか。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「あらゆる文字はGoogleの資産になるのだろうか?」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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