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「公」と「私」、「使用」と「所有」で考える情報との関わり方

電子書籍が問いかけるジャーナリズムの根幹

2010年10月20日(水)

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 先日、「本の未来」と題されたシンポジウム(日本ペンクラブ主催。9月29日、早稲田大学小野記念講堂で開催)にパネラーとして参加した。そこで語ったこと、あるいは語ろうとしていたことを要約すると、本の未来を「所有」と「使用」、「公」と「私」の組み合わせで考えたらどうかということだった。

 そして、その未来像はジャーナリズムの未来とも深く関わる。そこで本稿ではシンポジウムでの発言内容を再現しつつ、電子書籍時代のジャーナリズムのあり方についても少し書いておきたい。

電子データは「所有」か「使用」か

 本の「所有」と「使用」について考えさせられたのは、2009年の夏に起きた「事件」からだった。アマゾンから販売されていた読書端末「キンドル(Kindle)」でジョージ・オーウェルの『1984』を講読していた人の目の前で、その作品が消滅したのだという。

 まだ日本語表示可能なキンドルが販売される前のことであり、筆者自身はそのユーザーになっていなかったので、あくまでも報道されていた範囲でしか知らないのだが、事件の顛末はこうだったらしい。

 ジョージ・オーウェルの『1984』と『動物農場』に関して権利処理上のミスがあり、アマゾンがキンドルストアでのその販売を停止した。それと同時に既に購買されてダウンロードされていたその2作に関してはキンドルのライブラリーから遠隔消去され、購買していた人には返金処理されたらしい(『書物の変』[港千尋著、2010年、せりか書房]を参考にした)。

 ここで消えた1冊がオーウェルの『1984』だったので、この一件は大いに話題になった。なにしろ『1984』は「ビッグブラザー」が社会の隅々までを監視し、管理する話なのだ。既に購入されて読者の手元のキンドル端末に入っているはずの書籍データまでアマゾンが遠隔消去できるということは、まるで、ビッグブラザーが人々の生活の隅々まで目を光らせて、問題あればその修正を遠隔操作する『1984』の未来社会の話のようではないか!

 しかし、この一件に奇異な印象を持ったのは、古い紙の本のあり方に私たちが縛られているからかもしれない。アマゾンとキンドルは単に本を電子書籍化するだけに留まらず、本の存在様式自体をドラスティックに変えようとしているのだろう。キンドル上で電子書籍を読む作業は、紙の本を買って「所有」するのと同じように電子データを「所有」することではない。アマゾンがサービス提供する書籍データの使用権を手に入れることに近いイメージなのだろう。読者はキンドル端末を使うだけでなく、本に関してもデータ提供サービスを受けている書籍データの「使用」者なのだ。

 「所有」しているものを取り上げれば、もちろん、私的財産権の侵害となる。だが、サービスの使用に関しては、問題が発生してサービスの提供が不能になることはよくある。所有物はモノとして安定していて不変なのに対して、サービスは状況次第で立ちゆかなくなったりするナマものなので、提供が困難になった場合、返金などで処理されることが多いし、その経緯が理解できれば使用者も納得して諦める商習慣が成立している。

 その点、本の場合は、今まで「使用」するサービスではなく、「所有」する物理的存在だと信じて疑われなかったので、『1984』の消滅に驚かされたが、電子書籍とは使用権を購入するものだと意識が変わってゆけば、本についての感覚も徐々に変わってゆくのかもしれない。

 こうした「使用」する本は、しかし、本当に過去には例がなかったのか。例えば取材や研究の資料となる本を「所有」して手元に置いておきたいのは、データの確認など後から必要になった時にすぐに開いて読みたいからだが、もしも、いつでもどこでもその内容が読める体制が整えられれば、つまりそのデータを必要に応じて自在に利用できるようになれば、本を買い込む必要はない。言ってみれば、いつでも「使用」できないから、私たちは今まで仕方なく本を「所有」していたのだ。

 そう考えて見渡してみると、「使用」で済ませられる本は実は多い。装丁がきれいで手元に置いて眺め返したい本や、プレゼントされた思い出の本は「所有」する意味があるが、データとしてだけ必要な本は、いつでも「使用」できるのであれば「所有」せず、狭い書棚のスぺースを空けたい。

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牛島 信 弁護士