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「我々は西欧を理解できるか?」

西欧精神、すなわちクリスト教を日本人は理解できない。

  • 谷島 宣之

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2010年10月21日(木)

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 「古典」とか「名著」とか稱せられる作品は、天才や賢人の眞劍な思索の結晶であり、それとじつくり附合へば、吾々はこの世に充滿してゐる噓八百を見拔けるやうになる。それは素晴しい事ではないか。そこで私は、この世の噓八百の中から幾つかを選び、それらの噓を噓と知るためにはこれだけは讀むべし、そしてかう讀むべしと、日頃信ずるところを書き記したのである。選んだ作品の大半は短篇小説で、私はまづ荒筋を語り、次いで古今東西の作家達が看破つた噓が、今日依然として噓と看破られずに大手を振つて罷り通つてゐる次第を語る事にした。(「プロローグ」より)

 英文学者松原正氏(早稲田大学名誉教授)は1982年に出版した『人間通になる読書術 賢者の毒を飲め、愚者の蜜を吐け』の冒頭にこう書いた。

 「古典」や「名著」として松原氏は、フローベール、ヘミングウェイ、オーウェル、イプセン、モーム、モーパッサン、ドストエフスキー、バルザック、チェホフ、メルヴィル、ロレンス、ゴールディング、森鷗外、樋口一葉、中島敦、幸田露伴、国木田獨歩といった作家の中短編を紹介しつつ、そこに含まれる「賢者の毒」を示し、「嘘八百」の具体例を次々に挙げていく。毒が強すぎ、すぐには納得しがたい主張も書かれているが、大変考えさせられる書物であることは間違いない。

2700円+税、圭書房

 『人間通になる読書術』は長らく品切れであったが、このほど出版された『松原正全集 第一巻』に再録された。第一巻には、シェイクスピアなど英米演劇に関する文章も多数収められている。英文学や英米演劇を専門とする松原氏だが、意外にも「西欧の文学を日本人が理解するのは難しい」と語る。

 以下、松原氏へのインタビューと、ごく簡単な解説(太字部分)、「全集第一巻」からの引用で綴る。

※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

松原 全集をまとめることになり、これまで書いてきたものを読み直してみると、僕の言っていることは昔も今も少しも変わっていない。今書いていることもまったく同じです。

 西欧と日本は決定的に違う。西欧精神の真髄を我々日本人は理解できない。理解したつもりにはなれるかもしれないが、日本のものにしようとすると手に負えない。ヨーロッパの文学を我々の文学にすることは絶対にできない。一貫してそのことを考え、書いてきました。

西欧精神の真髄はクリスト教にある

 今、永井荷風について書いています。荷風は西欧を理解する難しさを分かっていた先達の1人です。来年出るであろう全集第二巻、ここに日本文学に関する文章をまとめる予定ですが、荷風についての一文を第二巻の結末に入れるつもりです。これが僕の最後の仕事ですね。いわゆるジャーナリズムの世界とは縁を切ってしまったので。

 西欧を理解できないことに気づいて苦しんだ、最も偉大な先達が夏目漱石です。ずっと書き続けてきた漱石論は書き上げました。ただ、漱石論は第三巻以降に入れることになりそうで、そうなると世に出るのは今から2年後でしょうか。それまで生きているかどうか(笑)。

 実際、全集第一巻を読むと、西欧理解の難しさを指摘する文章が随所に出てくる。

 クリスト教國の文學者は、いや文學者のみならず政治家も軍人も、聖職者も俗人も、「流された夥しい血」と「悔悛の強さ」が「均衡を保」つならば、いかに「悲劇的」ではあつてもそれを「勝利の生」として是認する。(中略)けれども、さういふ事が吾々日本人には最も理解し難い。(フローベール「聖ジュリアン傳」より)

 神を氣にするがゆゑに「人間性の兩端」を往來せざるを得ぬ激しさは、吾々日本人にとつてはたうてい馴染めないものなのであり、それゆゑ馴染んだ振りをするよりは寧ろ、馴染めない事を常に忘れずにゐる事の方が大事なのである。(ドストエフスキー「貧しき人々」「地下生活者の手記」より)

 ヘッダの非情は西歐精神の非情だからである。それは「世界滅ぶとも、正義行はるべし」との氣概に伴ふ非情で、それを日本人は理解出來ない。(イプセン「ヘッダ・ガーブラー」より)

松原 西欧はこうだが日本はこうだ、僕はそのことを執拗に追ってきた男です。西欧精神の真髄はクリスト教にある。ヨーロッパのクリスト教、アメリカのクリスト教、これを無視してはいけない。それなのに今、あまりにも無視してはいませんか。

コメント2件コメント/レビュー

西洋の思想・行動の基礎に「キリスト教」があることは間違いありません。しかし、更にその根底には、「ローマ帝国」の統治があると思います。西洋の基礎をなす「ローマ帝国」の思考・行動を理解するためには、塩野七生さんの「ローマ人の物語」が最適と思います。(2010/10/22)

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いただいたコメント

西洋の思想・行動の基礎に「キリスト教」があることは間違いありません。しかし、更にその根底には、「ローマ帝国」の統治があると思います。西洋の基礎をなす「ローマ帝国」の思考・行動を理解するためには、塩野七生さんの「ローマ人の物語」が最適と思います。(2010/10/22)

理解できないのは双方お互い様。むしろ違いを楽しめばいいんです。私も西欧大好きで、語学専攻して留学もした。現地の学生達と共同生活して、連日ケンカ腰で議論し、意見の違いを発見した。お互いの違いを見つけるのが楽しかった。理解できない事がそんなに深刻ですかね?家族同士でも100%理解できないのに、いわんや外国をや?違いは楽しむものです。ましてや会社もグローバル展開する時代に、理解できないで悩むのは、自分の度量が足らないのかも?優越感に頼らず、劣等感にしおれる事なく、心に余裕があれば、それぞれの独自性を楽しめますよ。理性だけで判断せず、感性も活かせば、共感出来るんだから。(2010/10/22)

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