「電書革命」

「コミュニティーがあればマーケティングはしなくていいんです」

“電書部”米光一成氏דインコ編集長”タカギタイキチロウ氏対談 その2

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2010年10月28日(木)

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 「新しい編集者」というキーワードで、電子書籍のさらなる可能性について考えてみる対談の2回目。「新しい編集者」とは、立命館大学映像学部の米光一成教授の言葉。「集めて」「編む」という、根源的な役割を持つ人のことを指しています。

 そして、この新しい編集者の代表がタカギタイキチロウ氏。

 第2回目では、新しい編集者とコミュニティーの可能性について考えます。

前回から読む)

―― 電書とコミュニティーの相性について、詳しく説明していただけますか。

米光一成(よねみつ・かずなり)
1964年12月22日、広島生まれ。ゲーム作家。立命館大学映像学部教授。ライター。『ぷよぷよ』『BAROQUE』『eMotion e-Mail』『おえかきでドン』等、ゲームの企画監督脚本を多数手がける。「POPEYE」「リバティーンズ」「月刊Gファンタジー」で連載を持ち、ライターとしても幅広く活動中。西武池袋コミュニティカレッジ「米光一成の文章力道場」講師、宣伝会議「編集ライター講座上級クラス」講師などを務め、表現力、発想力を鍛えるための教育活動に取り組んでいる。電子書籍に強い関心を持ち、『電書部』を立ち上げた。米光一成ブログ『こどものもうそう』。ツイッターアカウントは、@yonemitsu
(写真:やぎさやか)

米光 電子書籍のいいところって、作ってすぐに渡せるところと、物理的なコストがほとんどかからないところ。原理的にはコストと時間と場所がゼロにできるんです。

 印刷代、紙代のコストはかからない。実際にコンテンツの中身を作っていくコストだけ。だから部数もコントロールしやすい。5部でも1億部でも、だいじょうぶ。最初の制作コストがほとんどなので、あとで何部作ろうがOK。小さなコミュニティーでも気軽に作れる。

 時間もコントロールできるから、インコイベントをやったあとにすぐ、電子書籍を渡すこともできる。『米光予言』ってイベントをやったときは、イベント最後に、そのトークの内容を電子書籍にして持って帰ってもらった。さっき自分が質問した言葉が載ってる本を、帰りの電車で読めるんです。重さも関係ないから、20部あっても、全部渡せる。

 それこそ『季刊インコ』を続けていって、10年続ければ48冊。小鳥サミット10年記念に初めて来た人でも、電子書籍だったら、バックナンバーを全部買って帰りますよってことも簡単。限りなくゼロに近づくという膨大な量的変化が、いろいろな行動原理すらも変えちゃうんですよ。

 ネットワークの発達で作る側の規模も少なくて済む。昔だとプロジェクトに50人必要だったのが、5人でできる。5人のほうがいいものが作れる。セキセイインコのプロジェクトでいきなり50人集めるのはしんどいけど、5人なら集まる。機動力が武器です。

タカギ タイキチロウ
1975年生まれ。兵庫県芦屋市出身。日本大学藝術学部放送学科中退。競輪の予想屋見習いなどを経て、2001年、映像制作会社「グループ現代」に入社。ディレクターとして教育ビデオ、テレビ番組などを手がける。2010年6月退社。インコ評論家、小鳥モノづくり集団“pico”編集長として独立。10月初の短歌集「不義理なインコ」を電書で出版。秋にはCGM型電子書籍「電書インコ」を制作予定。ツイッターアカウントは、@taikichiro
(写真:やぎさやか)

タカギ 僕の場合、Tシャツを200枚作って、基本1人で梱包、発送して、宣伝しました。宣伝費はお金という意味で一銭もかけていません。

米光 それは大きい。宣伝も変わらざるを得ないと思うんですよ。

タカギ 宣伝は、家で梱包作業をしている合間にツイートすることぐらいでした。あとは買ってくれた人がツイートしてくださったりと、口コミで広がっていきました。実は新聞の営業の人から広告を出さないか、って言われたんです。「おたくの商品を今なら1万8000円で、これぐらいのスペースで載せられます」と。

米光 あー。どうしました?

タカギ 営業の人に聞いてみたんです、「何万人読者がいて、その中にインコを飼っている人は何人いるんですか」って。「インコですか…インコねえ…インコ…」って声がだんだん小さくなって、そのまま電話を切られました。

既にあるコミュニティーを活かす

―― タカギさんが2年間もインコのことばかり呟きつづけたせいで、インココミュニティーができたんですよね。こういうコミュニティーはこれまでになかったビジネスチャンスの土台になりますか。

米光 自分の好きなことをやっていると、あらかじめコミュニティーがありますからね。何か新たにはじめると、コミュニティー作りからスタートになっちゃう。それは時間がかかる。

 最近、「アジャイル」に関連した講演をやってくれと呼ばれるようになった。アジャイルという仕事の手法があるらしいんだけど、僕はよく知らない。でも、僕がやってることや、言ってることは、アジャイルの手法と根っこのところで同じだと言われて、それで呼ばれるんですね。アジャイルって、計画性よりも変化に重きを置くらしい。

 何百人という単位で動き、企画書を書いて何段階も承認を得るようなやり方は面倒くさい。上司と部下の関係も面倒くさい。「え、あなたの会社にはまだ上司ってシステムあるんですか?」って言うと、ウケるんですよ。気持ちの半分ぐらいはなくてもいいってみんな思ってる。アジャイルやってるなら、本来的には上司なんていらないはずなんです。あるとしても、上司がある人物に固定されている必要はまったくない。

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著者プロフィール

深川 岳志(ふかがわ・たけし)

1960年、大阪生まれ。関西学院大学社会学部卒業。ワープロ雑誌の編集プロダクションを経て、フリーライターに。著書は『プログラマの秘密』『プログラマの憂鬱』(ビレッジセンター)ほか。主にパソコン雑誌、IT系ニュースサイトに執筆。現在はPConlineに「Google探検隊」、「Macを買ったら絶対入れておきたいオンラインソフト」を連載中。



このコラムについて

電書革命

iPadやキンドルなど、新しいデバイスの登場で電子書籍が注目を集めている。そんな中で、まったくの手作りの電子書籍が文学愛好家が集う「文学フリマ」で画期的な売り上げを記録した。たった5時間の即売会で売れたのは1400部以上。同人誌即売会としては画期的な数だ。仕掛け人の米光一成立命館大学映像学部教授とエンジニアの松永肇一氏の2人に電子書籍をあえて「電書」と呼ぶ。文学と本を愛する2人に、5回にわたって電子書籍と“紙の本”の明るい未来について熱く語り合っていただいた。

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