「新しい編集者」というキーワードで、電子書籍のさらなる可能性について考えてみる対談の2回目。「新しい編集者」とは、立命館大学映像学部の米光一成教授の言葉。「集めて」「編む」という、根源的な役割を持つ人のことを指しています。
そして、この新しい編集者の代表がタカギタイキチロウ氏。
第2回目では、新しい編集者とコミュニティーの可能性について考えます。
(前回から読む)
―― 電書とコミュニティーの相性について、詳しく説明していただけますか。

1964年12月22日、広島生まれ。ゲーム作家。立命館大学映像学部教授。ライター。『ぷよぷよ』『BAROQUE』『eMotion e-Mail』『おえかきでドン』等、ゲームの企画監督脚本を多数手がける。「POPEYE」「リバティーンズ」「月刊Gファンタジー」で連載を持ち、ライターとしても幅広く活動中。西武池袋コミュニティカレッジ「米光一成の文章力道場」講師、宣伝会議「編集ライター講座上級クラス」講師などを務め、表現力、発想力を鍛えるための教育活動に取り組んでいる。電子書籍に強い関心を持ち、『電書部』を立ち上げた。米光一成ブログ『こどものもうそう』。ツイッターアカウントは、@yonemitsu
(写真:やぎさやか)
米光 電子書籍のいいところって、作ってすぐに渡せるところと、物理的なコストがほとんどかからないところ。原理的にはコストと時間と場所がゼロにできるんです。
印刷代、紙代のコストはかからない。実際にコンテンツの中身を作っていくコストだけ。だから部数もコントロールしやすい。5部でも1億部でも、だいじょうぶ。最初の制作コストがほとんどなので、あとで何部作ろうがOK。小さなコミュニティーでも気軽に作れる。
時間もコントロールできるから、インコイベントをやったあとにすぐ、電子書籍を渡すこともできる。『米光予言』ってイベントをやったときは、イベント最後に、そのトークの内容を電子書籍にして持って帰ってもらった。さっき自分が質問した言葉が載ってる本を、帰りの電車で読めるんです。重さも関係ないから、20部あっても、全部渡せる。
それこそ『季刊インコ』を続けていって、10年続ければ48冊。小鳥サミット10年記念に初めて来た人でも、電子書籍だったら、バックナンバーを全部買って帰りますよってことも簡単。限りなくゼロに近づくという膨大な量的変化が、いろいろな行動原理すらも変えちゃうんですよ。
ネットワークの発達で作る側の規模も少なくて済む。昔だとプロジェクトに50人必要だったのが、5人でできる。5人のほうがいいものが作れる。セキセイインコのプロジェクトでいきなり50人集めるのはしんどいけど、5人なら集まる。機動力が武器です。

1975年生まれ。兵庫県芦屋市出身。日本大学藝術学部放送学科中退。競輪の予想屋見習いなどを経て、2001年、映像制作会社「グループ現代」に入社。ディレクターとして教育ビデオ、テレビ番組などを手がける。2010年6月退社。インコ評論家、小鳥モノづくり集団“pico”編集長として独立。10月初の短歌集「不義理なインコ」を電書で出版。秋にはCGM型電子書籍「電書インコ」を制作予定。ツイッターアカウントは、@taikichiro
(写真:やぎさやか)
タカギ 僕の場合、Tシャツを200枚作って、基本1人で梱包、発送して、宣伝しました。宣伝費はお金という意味で一銭もかけていません。
米光 それは大きい。宣伝も変わらざるを得ないと思うんですよ。
タカギ 宣伝は、家で梱包作業をしている合間にツイートすることぐらいでした。あとは買ってくれた人がツイートしてくださったりと、口コミで広がっていきました。実は新聞の営業の人から広告を出さないか、って言われたんです。「おたくの商品を今なら1万8000円で、これぐらいのスペースで載せられます」と。
米光 あー。どうしました?
タカギ 営業の人に聞いてみたんです、「何万人読者がいて、その中にインコを飼っている人は何人いるんですか」って。「インコですか…インコねえ…インコ…」って声がだんだん小さくなって、そのまま電話を切られました。
既にあるコミュニティーを活かす
―― タカギさんが2年間もインコのことばかり呟きつづけたせいで、インココミュニティーができたんですよね。こういうコミュニティーはこれまでになかったビジネスチャンスの土台になりますか。
米光 自分の好きなことをやっていると、あらかじめコミュニティーがありますからね。何か新たにはじめると、コミュニティー作りからスタートになっちゃう。それは時間がかかる。
最近、「アジャイル」に関連した講演をやってくれと呼ばれるようになった。アジャイルという仕事の手法があるらしいんだけど、僕はよく知らない。でも、僕がやってることや、言ってることは、アジャイルの手法と根っこのところで同じだと言われて、それで呼ばれるんですね。アジャイルって、計画性よりも変化に重きを置くらしい。
何百人という単位で動き、企画書を書いて何段階も承認を得るようなやり方は面倒くさい。上司と部下の関係も面倒くさい。「え、あなたの会社にはまだ上司ってシステムあるんですか?」って言うと、ウケるんですよ。気持ちの半分ぐらいはなくてもいいってみんな思ってる。アジャイルやってるなら、本来的には上司なんていらないはずなんです。あるとしても、上司がある人物に固定されている必要はまったくない。
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