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「クマ」に出会ってしまった時に考える「戦略的互恵関係」の意味

2010年10月22日(金)

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 日中関係は、良くない方向で推移している。
 なにより民心が荒れている。両国ともに、だ。まずい。
 議論が紛糾しても、交渉が難航していても、民情が平静であれば、大筋、心配は無い。よしんば条件面で決裂しても、両国の国民が友好的である限りにおいて、未来は楽観できる。亀裂を修復し、話し合いを仕切り直せば事態は少しずつでも改善する。たまった洗濯物と同じだ。順ぐりに処理すればOK。ノープロブレムだ。

 ところが、国民感情が悪化すると、事態の打開は難しくなる。表面的な部分でいかに関係が修復されようとも、火種は後々まで残る。

「一時的なヒステリーですよ」
 という意見もある。あるいは
「八つ当たりだよ」
 という見方すら。
 実際、デモ隊の中には、尖閣諸島(あるいは中国側の呼び方では釣魚諸島)がどこにあるのかさえ知らずに参加した者が相当数含まれているという。にもかかわらず彼等が見たことのない無人島の帰属にこだわったのは、それが隊列の先頭に掲げる旗として好適だったからだ。つまり、彼等が求めていたのは、領土や国益それ自体ではなくて、愛国なり世直しなりといった団結のためのスローガンだったということだ。

 その意味で、魚釣島(←尖閣諸島の中で一番大きい島の日本名)は、毛鉤だった。
 特に中国の内陸部で頻発した反日暴動は、餌の無い鉤に群がる魚群そのものだった。

 とはいえ、デモが八つ当たりだったのだとして、そのことを理由に内陸部の反日暴動を軽く見て良いということにはならない。
 むしろ、八つ当りだからこそ楽観できないのかもしれない。

 根拠のある反発なら対処のしようはある。手順と言葉を尽くせば、説得が功を奏することもあるはずだ。
 が、闇雲な暴発には、有効な対処法が無い。
 強いていえば、対処しないのが唯一の適切な対処法ということになるのだろうが、こういうことは言わない方が良いのだろうな。荒れるから。

 荒れるといえば、騒ぎが拡大し始めた頃、枝野幹事長代理が、中国について「あしき隣人」という言葉を使って物議を醸したことがあった。
 これについては、前原外務大臣がすかさず
「日中間はこれから良き隣人として戦略的互恵関係をしっかり結んで、共存共栄の道をしっかり探っていくべきだと思う」
 と述べてフォローをした。あっぱれ。見事な火消し、と、前原談話は各方面でおおむね好感された。

 私はちょっと別な感想を抱いた。
「ん? 《日中は良き隣人》という言明は、《夜間はその限りではない》旨を暗に語ったことにならないだろうか」
 と思ったのである。
「なんだそりゃ?」
「だからほら、日中というのは昼間のことじゃないか。昔からよく言うだろ、《昼は淑女、夜は娼婦》とか」
「つまり、昼のうちは良き隣人でも、夜になると別人だぞ、と、そういう話に持って行きたいわけか?」
「うん。面白くないか? 前原さんが皮肉を言ったんだとすると」
「……原稿のネタにはするなよ。品性を疑われるぞ」

 というわけで、忠告にしたがって、先週は、中国ネタを自粛した次第なのだが、一週間を経て、やっぱり我慢できなくなった。ので、結局ネタにしている。困ったことだ。

コメント71

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「「クマ」に出会ってしまった時に考える「戦略的互恵関係」の意味」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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