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96. 職業は名刺の肩書のうえにのっているのではない。

黒井千次『働くということ』と福田定良『仕事の哲学』

  • 千野 帽子

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2010年10月27日(水)

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 日直のチノボーシカです。

 前回、黒井千次の短篇小説『聖産業週間』(1968、『時間』所収)のなかで、語り手の同僚である会社員・田口運平は、仕事にたいする自分の考えを、このように書いていた。

デスクワークと限定されている私達の仕事において、個々の作業の手応えは、作られた資料の評価とか、それの有効性とか、きわめて抽象的なものに限定されてしまう。〔…〕 私は、私の〈熱中〉の銃身を何で充たせば良いと言うのか。〔…〕

時間』黒井千次著、講談社文芸文庫、1,121円(税込)

ここから導きだせることは多い。というか、田口運平の不完全燃焼感はいまだ未分化なものだから、ここを出発点としてさまざまな方向に思考を延長することができる。

 小説は物語として筋を追うこともできるが、架空の他人の思考をヒントにして自分の考え事をすることをも、読者に可能にしてくれる。

 余談だが、私はほんの数年前まで、こういう小説観には反対だった(いまでも、小説をまっさきに思想的に読もうという気は起こらない)。

 それでも、架空の人物というまったくの他人の考えにより添って、こちらが脳を動かすことが気持ちよい場合もある。ふだん動かしていない筋肉を屈伸するエクササイズのようなものだ。

 前回私は田口の不完全燃焼感を、

「俺、熱中してないじゃん。充実してないじゃん。この仕事失敗したら死ぬ的なクリフハンガー状況が欲しいぜ!!」

とパラフレーズした。しかしこの書き換えは、田口の未分化な不完全燃焼感の表現の、ほんの一側面だけを拡大したものにすぎない。

 田口の表現のなかには、肉体労働とデスクワークの対比、職住一致と職住分離の対比、小集団労働と組織労働との対比、労働の結果が目の前で確認できるケースとできないケースの対比、といったさまざまな区分けが、原始的でパワフルなごった煮状態でぐらぐらと沸騰している。

 作者である黒井千次は、この短篇で芥川賞候補となった。翌1969年に、連載第17回から第23回にかけて取りあげた『騎士グーダス』『時間』を発表し、1970年に富士重工業を退社して作家専業となる。

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長