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キリスト教の愛の思想の源泉となった
「愛の秩序」

わたしは愛する【17】

2010年10月28日(木)

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エロスとアガペーを統一するアウグスティヌスの愛

 さてこのキリスト教の愛の概念を調べるために、アウグスティヌスの経験を振り返ってみよう。アウグスティヌスはプラトン以来の古代ギリシアのエロスの概念と、キリスト教のアガペーの概念を統一するような立場に立っているのである。

 アウグスティヌスはキリスト教の伝統における「愛の思想家」ということができるだろう。パウロにならって「愛は信仰や希望よりも大きい」[1]と考えていた。「愛さない者は、たとえその信じることが真実だとしてもその信仰は空しいし、その望むところが真の幸福に属すると思われるとしても、その望むところは空しいのである」[2]というほどだったのだ。そもそもアガペーの概念が確立されたのは、アウグスティヌスの理論によるところが大きいのである。

新プラトン主義の道

 回心にいたるまでアウグスティヌスは、同時代の新プラトン主義の影響のもとで、きわめてエロス的な愛の道を経験していた。この経験は、プラトン主義的なエロスの道のもっていた影響力の強さをまざまざと示すものだった。新プラトン主義の哲学者のプロティノスの弟子のポルピュリオスは、師のプロティノスが自分の魂の中の叡智から、瞬時も眼を離そうとしなかったことを、「彼は眠り込んでしまわない(つねに目覚めている)人で、〈清らかな魂〉をもっていて、つねに神的なものを目指して努力し、心魂を傾けて、それを愛した」[3]と伝えている。

 そして「自己の思念によって」、プラトンが『饗宴』に示した道筋にしたがって、自分を最高の超越的な神のもとに参入させていたプロティノスのもとに、「かの神が、姿もいかなる種類の形態をもたず、知性と一切の知性対象を超えて鎮座まします神の神が、現前した」[4]という。プロティノスは瞑想によるこの神との合一を人生において四度まで実現したという。

アウグスティヌスの見神経験

 プロティノスが精進と神への愛によって実現したこの神との合一という貴重な体験を、じつはアウグスティヌスも経験したことがあるのである。アウグスティヌスはプラトンの道にならって、「神への愛」に基づいて、この神にいたる道を「段階的に」進んだのだった。

 アウグスティヌスは淡々と回想する。「物体界から身体的感覚によって知覚する魂に、この魂から身体的感覚が外物の知覚を伝える魂の内的感覚に、そしてここまでは動物も到達することができるのであるが、それをこえて身体的感覚から得られたものがその判断を受けるように委ねられる理性的思惟の能力にまで登っていった。そしてこの能力もわたしにあってはまだ変化することを悟って、自己直視にまで自己を高め、その思惟を習慣から引き離し、矛盾する幻想の群れから身を退け……、ついに一瞬の瞥見によって、存在するものに到達した」[5]。この「存在するもの」こそ、「不変で真である永遠の真理」[6]であり、神そのものにほかならなかった。

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「キリスト教の愛の思想の源泉となった
「愛の秩序」」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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