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東大に行けば虚無でもいいのか!?――『されど われらが日々―』にダマされた日々

語り合おう、恥ずかしくも懐かしい「青春の5冊」その2

  • 岡 康道,小田嶋 隆,清野 由美

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2010年11月1日(月)

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 読書の秋にふさわしい「青春の5冊」シリーズ。ヘッセ『車輪の下』の思わぬ黒さにおののいた前回(こちらから)からの続きです。秋の夜長、枕元にはぜひこの連載をまとめた『ガラパゴスでいいじゃない』をどうぞ。くすくす笑いながら夢の世界に旅立てることうけあいです。ちなみに、あのケータイとは無関係です。念のため。

――岡さんは前回の最後で、柴田翔『されど われらが日々――』を、ご自分の恋愛観の原点になった本として挙げられました。

 『されど われらが日々――』は、同人誌「象」に1964年に発表され、同年上半期(第51回)芥川賞受賞作となった小説。「1955年、共産党第6回全国協議会の決定で山村工作隊は解体されることとなった。私たちはいったい何を信じたらいいのだろうか―「六全協」のあとの虚無感の漂う時代の中で、出会い、別れ、闘争、裏切り、死を経験しながらも懸命に生きる男女を描き、60~70年代の若者のバイブルとなった青春文学」(以上、アマゾンのBOOKデータベースより引用)

 それ、今回はまず、謝ろうと思って(笑)。この間、読み返して、何で俺、これを選んじゃったんだろう? って。

小田嶋 岡が5冊に挙げていたから、俺も久しぶりに読んでみたら、ひっくり返りましたね。

○岡 康道さんの5冊(順不同)

『長いお別れ』 レイモンド・チャンドラー

『邪宗門』 高橋和巳

『斜陽』 太宰治

『されど われらが日々――』 柴田翔

『絢爛たる影絵―小津安二郎』 高橋治

○小田嶋 隆さんの5冊(順不同)

『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ

『素晴らしいアメリカ野球』 フィリップ・ロス

『仮面の告白』 三島由紀夫

『ヒューマン・ファクター』 グレアム・グリーン

『百年の孤独』 ガルシア・マルケス

 俺さ、どうして柴田翔なんかにかぶれていたんだろうか。

小田嶋 お前が謝ることはないよ。俺もね、これはかぶれていた。若いころの自分って、こんなばかだったか、とあらためて衝撃を受けた。

 これにやられる、というのはおかしいよね。まずさ、この主人公というか書き手は偽者じゃないか。

小田嶋 そう。もう、うさんくささ横溢だよね。

腹に据えかねて、夜中にメモを取りました

 「私」という主人公は、東大の修士にいて、大学教授になる将来は約束されていて、本のひとつも書くだろう、と。で、いろいろな女と寝たけれど、結局、幼なじみで遠縁の女の節子と結婚することになるだろう、と。もちろんそこに激情のようなものはないんだよ。ないけど、僕は君と暮らすことが一番いいことだと考えているんだ、みたいなことをつらつらと言っている。そういう男に、節子という婚約者が最後に的確にノーを出して、去っていくだけの話なんだけど。

小田嶋 俺、寝ながら読み返していんだけど、わざわざ起きてメモを取った。

―― 腹にすえかねて?

小田嶋 腹にすえかねましたね。全編、やめてくれ、という言葉ばっかり。特にこんなばかな、というせりふがあって。“生きることに比べたら、幸福かどうかなんて取るに足らないこと、だから幸福を求めない”とか何とか、そんなせりふを女に向かってわざわざ言うか。

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