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日本の野球には「窓が足りないんじゃないですか?」

2010年10月29日(金)

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 横浜ベイスターズの球団買収交渉は不調に終わった。
 破談自体は仕方がない。期間も限られていたわけだし、条件が合わない以上、交渉が決裂するのは当然のなりゆきだからだ。
 問題は、事前折衝の段階で話が外部に漏れていたことだ。
 交渉の過程が報道されたということは、その間、チームが店晒しにされていたことを意味する。チームと選手とファンのすべてが、だ。これはむごい。

「婚活」という言葉について、ある女性が「安売り感が半端ない」と言っていたことを思い出す。
「タナザラシっていうか、ダンピング推奨銘柄ってことにならない?」
「だって、本来、相手を選ぶのはこっちなわけでしょ?」
 なるほど。結婚が市場のだとして、であるのだとすれば、売り手であるよりは買い手としてかかわりたいのが人情というものだ。
「なのに《婚活中》とか言われると、売りに出されている気がするわけ。値札をつけて歩いてる感じ。屈辱よね。スーパーのタイムセールじゃあるまいし」

 さて、交渉が決裂した現在、チームは「売れ残った」形だ。しかも「売りに出そうとした」オーナーのもとにそのまま居続けることになる。家庭内別居。あるいは家庭内家出息子。公開ネグレクト保育。いずれにしてもひどい話だ。
 この先、少なくとも1シーズンの間、彼らは、ともに闘わなければならない。離婚が成立していないというだけで、愛情の不在がはっきりしてしまっている家庭みたいな淀んだ空気の中で。とてもキツい状況だと思う。

「窓が足りないんじゃじゃないですか?」

 と、トステムのCMは言っていたが、実際、チームに欠けていたのは、「展望」だったのかもしれない。密室で考えていても良い考えは浮かばない。いまさら言っても遅いが。

 売却交渉の過程が外部に漏れたことも良くなかったが、その後の展開がさらによろしくなかった。
 神奈川県に拠点を置く家電量販店のオーナーが、球団買収レースに参入する意思のある旨を表明したあたりまではまだ良かった。想定内だ。が、球界の有力者が球場使用料について苦言を呈し、それに球場のオーナーが反論したあたりから雲行きが怪しくなってくる。で、県知事が「宣伝できれば良いのか」などとお門違いのコメントを述べ立てるに及んで、事態は最終的にゴシップ記事の様相を呈する。交渉の当事者は、外野のやかましさに辟易したはずだ。

 あるいは、交渉決裂の本当の理由は、一連の報道を通じて明らかになった球界の体質そのものにあったのかもしれない。この一月程の間に、関係者は、この国で球団を保有するということの面倒くささと、リスクの測り難さを思い知らされたはずだ。

「窓が足りないんじゃないですか?」

 と、彼らはそう思ったに違いない。
 ビジネスどころじゃないぞ、と。
 契約がクローズドで条件がブラックボックスでコネクションが退嬰的でネゴシエーションが前近代的でユニオンが古色蒼然であるにもかかわらず、なぜか、漏れてはいけないはずの交渉過程だけは、あっさりとリークされている。フルオープンで。なんというアチャラカな組織。まるで江戸時代のお家騒動じゃないか。
 窓は嵌め殺し。ドアは錆びついて動かない。壁には耳があり、障子には目がついている。で、天井は青天井。床は底抜け。
「この城はリフォーム不能かもしれないぞ」
 と担当者が考えたのだとしても無理はない。私は彼を責めない。
 足りないのは解体業者だったのかもしれない。

コメント35件コメント/レビュー

読むことが「時間の無駄」なコラムにわざわざコメント。これこそ時間の無駄。■小田嶋氏のコラムは諧謔に満ちているが、素直に読めば楽しいし、裏を読もうとしても面白い。(2010/11/02)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「日本の野球には「窓が足りないんじゃないですか?」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

読むことが「時間の無駄」なコラムにわざわざコメント。これこそ時間の無駄。■小田嶋氏のコラムは諧謔に満ちているが、素直に読めば楽しいし、裏を読もうとしても面白い。(2010/11/02)

球団名が変わったら、某UHF局のCM「ゴーゴー、横浜ベイスターズ」という歌もなくなるのかなぁとふと思いました。小学生のころ、(当時)大洋ホエールズといえば、決して上位にはいないが、時々強いチームを負かしてしまうというイメージ強かったですね。スーパーカートリオの前の世代で田代、シピン、江尻は印象に残っています。コラムの結末に思わずクスリと笑いました。(2010/11/02)

久しぶりに1ページで止めずに最後まで読みましたが、最後の文章で一気にラジオボタンの右を押すという行為に至りました。「切腹や仇討ちが現代の常識として通用しないということと、時代劇を楽しむことが別の問題である」を見たあたりはプラス評価してたんですが。名称で言うなら、ホエールズよりも大洋を残して欲しかったですね。引っ越しても日本ハムのように。そういえば、阪急が身売りする際の条件に「ブレーブスという名を残す」もありましたが、簡保の宿を買い叩いた人は1年でその約束も反故にしました。その人は今回の横浜売却に賛成したとは思えませんが。まぁ、新聞社の老害が闊歩している限り、野球の未来は無いです。ついでに言えば、野球なんかどうでも良いです。というより、スポーツ中継全部不快。その後のドラマ放送開始時刻がずれることを当たり前と思っている輩なんか信用できない。映画は映画館で。スポーツはスポーツ会場で。TVドラマはTV放送で。自明です。(2010/11/01)

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