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動画流出問題が呼ぶ「次の失敗」

2010年11月12日(金)

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 例の衝突動画を一目見て、私は
「あちゃー」
 と思った。
 画面の中で起きている出来事に驚いたのではない。

 映像は、案の定だった。
 思っていた通りのイリーガル・アタック。中華アスリートのプレースタイルを見慣れた者の目には毎度おなじみのカンフー・スタンダードってヤツだ。ペナルティーエリア内での唐突なスライディング。それもブラインドサイドから急所を狙って繰り出される挺身タックル。一発退場モノの悪質ファウルだ。想定通りの少林寺航法。やりたいことはやっチャイナ。食えるモノなら食っチャイナ。どこにも驚くべきポイントはない。

 私が衝撃を受けたのは、自分自身の無能さに対してだった。
 というのも、私は、問題の映像が動画サイトにアップされる事態をまったく想定していなかったからだ。
 なんという迂闊。
 あってはならないことだ。
 だから、スタートボタンをクリックして0コンマ2秒後には、自問自答を始めていた。
「どうしてオレは動画のアップを予想していなかったんだろう」
 どう考えても私に予測がつかなかったはずはないのである。

 というよりも、本当のところを述べるなら、動画を見ながら、私は
「こんなことになる気がしていたぜ」
 と、一瞬、そう思った。
 実際には、まるで「そんな気」なんてしていなかったくせに、図々しくも、だ。

 コラムニストには奇妙な自意識が宿る。
 オレの目にはすべてがお見通しだという大風呂敷を前提としたテキストを生産しているうちに、本当に自分でそういう気持ちになってしまうのだ。
 コラムニストでなくても、事情を知らない分野についてそれらしい言辞を弄し、分かってもいない出来事についていっぱしの口をきく暮らしを続けている原稿書きは、いつしか誇大妄想に陥る。ええ、一種の職業病ですよ。

 で、コラムニストの脳裏には、最終的に、ニセの記憶が定着する。
「衝突動画がYouTubeにアップされるなんてことは、オレにははじめっからお見通しだったぜ」
 とか。

 本欄は、字数の限られたメディアではない。ので、なるべく正直に申し上げることにする。
 私は当件について、ひとっかけらの予見すら抱いていなかった。予断も予想も予測も予期も。
 だからこそ「あちゃー」とのけぞったのである。

 動画は複数のルートを通じて、様々な関係者に配布されていた。
 コピーはさらに数多く出回っていた。
 であるならば、漏洩は十分に予想できたところだ。
 しかも、海上保安庁の関係者や地検のスタッフの中には、政府の情報隠蔽に対して釈然としない気持ちを抱いているグループがたくさんいた。
 マスコミや与党の中にさえ同じ気持ちを持っている人々がいた。
 とすれば、ブツがあって気持ちがあって手段(←動画サイトのことだが)がある以上、情報が漏れない道理はなかったのである。
 どうしてこんな簡単なことが見通せなかったのだろう。
 こっちの方がむしろ不思議だ。

コメント57

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「動画流出問題が呼ぶ「次の失敗」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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大量陳列、大量販売というのがある程度限界にきているのかなと思います。

松﨑 曉 良品計画社長