「毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド」

98. 『知ってるつもり?!』をこじらせて。

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2010年11月17日(水)

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 日直のチノボーシカです。

すばる』2010年12月号 集英社、880円(税込)

 《すばる》2010年12月号に、小説家の藤野可織さんが「フィギュアスケートのシーズン」というエッセイを書いている。

 藤野さんにとってフィギュアスケートとは、〈エアロビクスの大会〉的な珍妙さと〈ローザンヌ国際バレエコンクール〉的な壮麗さが〈寄せては返す〉ものであり(そうそう、フィギュアスケートとは妙ちきりんかつ壮麗なものです)、〈珍妙さと壮麗さに動揺するあまり、私はフィギュアスケートのこととなるとすっかり取り乱すようになってしまった〉のだという。

 これはあのスポーツに私が感じているものとほぼ同じだ。作家とはなんとうまいことを書くものだろう。

ただし私は、ここ数年のブームに引きずられて熱くなったにわかファンに過ぎない。〔…〕
それにしたって、もう5、6年だ。ファン歴は浅いが、それでもこれだけの期間入れ込んでいれば少しは目が肥えようものなのに、〔…〕ジャンプの種類もろくに見分けることができない。ルッツとフリップの区別なんか、ぜんぜんつかない。回転不足もわからない。スピンのチェンジエッジもだめだ。〔太字部分は原文では傍点〕

藤野さん、俺もですよ。

 というか、藤野さんに比べて私のほうがもっと浅い。〈チェンジエッジ〉、そう言えばそういう言葉があったなあ…。

 半可通という言葉があるが、私はフィギュアスケートについては「全不可通」なのだ。

 まさに6年前、中野友加里選手と安藤美姫選手を応援しようと決め、その後男子では高橋大輔選手(ポートランドでの優勝おめでとうございます)のニュースに注目してきた私だが、実況解説者がなにを言っているのか、いまでもけっこうわかっていないことが多い。

 どうなんでしょう、フィギュアスケートの中継を見ている人は、荒川静香の解説に完全についていけるほどあれを、試合を、把握しているのでしょうか。

 それまで見てきたプロ野球や総合格闘技よりも、フィギュアスケートの解説が遥かに難解に思えるのは、私の耄碌のせいなのだろうか。

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著者プロフィール

千野 帽子(ちの ぼうし)

パリ第4大学博士課程修了。京都在住の勤め人・俳人。2004年より休日のみ文筆業。著書に、「東京新聞」連載をまとめた『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』(河出書房新社)、「野性時代」連載をまとめた『読まず嫌い。』(角川書店)、読書漫筆集『文學少女の友』(青土社)。「ミステリマガジン」「ジャーロ」にて連載、また「東京新聞」「讀賣新聞」「SPUR」「Figaro japon」「BRUTUS」「HanakoWEST」「yomyom」「週刊文春」「文藝」「文學界」「すばる」「ユリイカ」「真夜中」「小説トリッパー」「早稲田文学」「ダ・ヴィンチ」「週刊読書人」「別冊宝島」などに寄稿。



このコラムについて

毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド

この連載は、「働く大人」の読者の疲れを癒し、リフレッシュして勤労意欲を高めるのに向いた文学作品のガイド、では断じてない。そうではなく、こちらが文学の世界に単身潜入して、大人の読者に向けてレポートするものである。ここで取り上げるのは、働くということにまつわる、個別の奇妙さ、ヘンテコさ、そこから立ち上がってくる疑問をうじうじと、ひとつひとつ拾っていく、そんな文学や漫画。私たちが毎日そんなことをしていれば、仕事が立ち行かなくなるから、代りに文学がそれをやってくれている。腸内細菌のようなものだが、腸内細菌と違って、なにかの役に立つという保証がないのが文学だったり漫画だったりするのである。そういうものを紹介する連載だ。だから、仕事中にこっそり読んでほしい。

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