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愛は原初的なものとして認識や意欲に先立つのである

わたしは愛する【20】

2010年11月18日(木)

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シェーラーの価値の秩序

 このパスカルの愛の秩序の思想に大きな影響をうけて、独自の愛の秩序の思想を展開したのが、マックス・シェーラーである。シェーラーは現象学の分野で活躍した哲学者で、ハイデガーが『存在と時間』で登場するまでは、フッサールとともに現象学を代表する思想家だった。

 シェーラーの主著は『倫理学における形式主義と実質的価値倫理学』で、絶対的に善なるものは善き意志だけであると、倫理学において実質的な内容を含めることを拒んだカントの「倫理学における形式主義」を批判しながら、パスカルと同じような価値の序列を考えた。

 パスカルの価値の序列は、身体(外見)、精神(論理)、心(愛)だったが、シェーラーの価値の序列では、愛は一つの価値秩序に属するものではなく、すべての価値秩序に属するものである。シェーラーの価値の秩序は次の四つに分類される。

 第一の秩序は快価値の秩序であり、快と不快という感覚の状態に依拠するものである。第二の秩序は、生命価値の秩序であり、たんなる快と不快ではなく、健康、生命力、老化などの状態に対応する。第三の秩序は、精神的な価値の秩序であり、ここには美醜という美学的な価値、正義と不正という価値、純粋な知識の価値が含まれる。第四の秩序は聖なるものの価値であり、超越的な次元の価値である。

愛の秩序の記述的な意味

 これらの秩序のそれぞれに、その価値を愛することがもっとも巧みである人々が典型として存在する。快と不快の秩序を愛するのは、享楽的な芸術家であり、美を愛する人々である。生命価値の秩序を愛するのは、共同体の英雄であり、指導者である。精神価値の秩序を愛するのは、天才である。聖なる価値の秩序を愛するのは聖人である。愛するものが何であるかが、その人の内的な価値の序列を明らかにするのである。

 すべての人は、快楽を愛する人、生命力を愛する人、精神的なものを愛する人、聖なるものを愛する人のそれぞれのどの典型に近いかで、分類することができるのであり、また一人の人間のうちでこれらの価値のどの秩序を強く愛しているかで、その人の真のありかたが露になると、シェーラーは考える。愛の秩序はその人間を「記述する」のである(これが愛の秩序の記述的な意味である)。

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「愛は原初的なものとして認識や意欲に先立つのである」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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