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金次郎が見ていた未来はどこに続いているのだろう

2010年11月19日(金)

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 勤労感謝の日。
 何に感謝するんだ?
 勤労それ自体に? でなければ、働いた結果に対して、あるいは、働くお父さんにということだろうか?
 それとも、雇ってくれている雇用主に感謝しなさいという、持って回った恫喝なのか。

 昔から疑問だった。
 で、教師に質問したことがある。
 小学4年生の頃のことだ。その当時、私は、発明王トーマス・エジソンが質問魔だったという伝記物語の記述にモロな影響を受けて、周囲の大人を質問攻めにする困った子供だった。もう少し年が行って6年生になった頃には、「やたらと手を挙げるのは子供っぽいぞ」などと、斜に構えるようにもなるのだが、齢10歳の私は直情径行型の生徒だったのである。
「何に感謝すれば良いのですか?」
 私は手を挙げて質問した。

 教師はうまく答えられなかった。
「さあ……」
 と言ったきり黙ってしまった。
 そして、5秒ほど考え込んだ後、こう言った。
「今の質問の答えは、これから先、みなさんが大人になるまでの間に、自分で見つけなければなりません」
 なるほど。
 先生の答えは、もしかすると、苦し紛れのごまかしだったのかもしれない。
 でも、今になって振り返ってみると、なかなか素敵な回答だった。

 すべての質問に答えがあるわけではない。
 良い質問には良い解答が無い。
 真に重大な問いへの答えは、自分で見つけなければならない。
 誰かに教えられた答えは、どんなにうまく書けていても、本当の解答にはならない。
 おそらく、そういうことだ。ありがとうY先生。

 さてしかし、私はもうずいぶん前に大人になっているはずなのだが、いまだにわからない。
 勤労感謝の日を迎えるにあたって、私は、一体、誰の何に対して、何を感謝すれば良いのだろう。

 今回は、仕事について考えてみたい。
 労働。仕事または雇用。勤労と感謝と自己実現。あるいは就職と人生。労働の疎外をめぐるあれこれについて。
 就活中の学生さんにとっても、この時期は、色々と考えるところが多いと思う。
「勤労感謝の真意はニート差別ですよ」
 と、何年か前、さる編集部の学生アルバイト君はそう言っていた。
 彼はどうしているだろう。
 しかるべきどこかに勤め口を見つけることができただろうか。

 ウィキペディアを見ると、「勤労感謝の日」について、
《勤労感謝の日が制定された1948年に日本はまだ米軍の占領下にあったが、占領軍は国家神道と結びついた新嘗祭を危険視した。当時力をもっていた占領軍の左派勢力は、米国の Labor Day と Thanksgiving Day を併せた Labor Thanksgiving Day という祝日を考案し、これを和訳したのが「勤労感謝の日」である。》
 てなことが書いてある。
 誰が書いた記事なのかはわからない。
 本当なのかどうかも、ちょっと怪しい気がする。

 が、ひとまず、このウィキペディアの記述を字義通りに受け止めて、「Labor Thanksgiving Day」というこの奇天烈な英語が、本当に勤労感謝の日のネタ元だったということにしてみると、このどうにも未消化な英語の直訳が、日本語として明確な意味を持ち得ていないのは、理の当然というのか、言語学上の必然であったということがよく分かる。もちろん、「勤労感謝の日」という、この木で鼻をくくったような訳語が、小学生だった私に理解できなかったことも当然なら、先生が説明できなかったことも、極めて自然ななりゆきだった。だって、はじめから意味なんかありゃしなかったのだからして。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「金次郎が見ていた未来はどこに続いているのだろう」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士