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池上彰さんに聞く!
なぜメディアは「わかりやすく伝える」ことができないんでしょうか?

『世界を救う7人の日本人』発売記念連続インタビュー【4】

2010年11月30日(火)

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伝えるメディア側が、実は視聴者や読者をバカにしている?

――前回までのお話で、日本の国際貢献が、新しいインフラ市場やBOP市場の発達と密接に関連していること、そして多くの日本人が現場で奮闘していることを知りました。国際貢献というと、税金のムダ使いじゃないか、現地で役に立ってないんじゃないか、というぼんやりしたイメージがあったのですが、メディアの末席にいながら不明を恥じる次第です。

池上 私も現場を取材し、専門家の方々と直にお話しすることで、日本の国際貢献の意味がはっきり見えるようになりました。

 実は長年、日本国内で「国際貢献」という言葉はあまりイメージがよくありませんでした。それというのも、70年代から80年代にかけて、「日本は国際貢献分野でカネは出すけれどもヒトは出さない」と何度も批判されたからです。

 きわめつけは、90年代初頭の湾岸戦争のときです。日本は130億ドル以上の資金援助を多国籍軍に対して行いました。ところが、このとき、まさに「日本は、カネは出すが、ヒトは出さない」と参戦国の批判を浴びたんですね。終戦後も、イラクに侵攻されたクウェートは、参戦国に感謝決議を行ったものの、日本の名はそこにありませんでした。

 かくして国際分野で日本はカネは出すけれどヒトは出さない、というイメージができあがってしまいました。
 問題はそのあとです。90年代から2000年代にかけて、日本の国際貢献の現状について、メディアの多くは現場取材を行いませんでした。貢献の内容の変化についても検証がされませんでした。

 今回、『世界を救う7人の日本人』の取材を通して、私はアフリカのスーダンやウガンダの国際貢献の現場に赴きました。そして、「カネは出すが、ヒトは出さない」というのが固定化した誤ったイメージであることを思い知りました。

 スーダンの片田舎では日本人の専門家が、母子保健の改善に村の村落助産師たちを指導して回っている。紛争停止から間もない南部のジュバでは、打ち捨てられた戦車が道端にあり、満足に舗装もされていない街の中を、現地の人たちが新しい就労機会を得るためのさまざまなプロジェクトを遂行するために、国際機関や、JICAや、NPOなどさまざまな組織に属する日本人たちが、文明生活ができるぎりぎりの環境下で奮闘している。

 日本の国際貢献の特色は、むしろ「ヒト」にありました。現地の人たちの目線で、現地の人たちに交じって、新しい社会インフラを構築し、そのインフラが活用されるためのサービスをともに作っていく。言語の違いがあります。文化や習慣の差があります。そんな差異を、辛抱強く、けれども期日までにちゃんと超えて、ミッションを果たす。

 (たいしたものじゃないか、日本の国際貢献)と思うと同時に、日本で報じられている情報と国際貢献の現実との間には大きなギャップがある。これはきちんと伝えないと、と強く思いました。

アフリカ・スーダンの小学生、中学生たちにも伝えたいニュースがあるはずです。

――本来は、もっと前からメディアがきちんと検証して伝えていなければいけなかった事実ですね。国際貢献とインフラ市場やBOP市場とのかかわりも知っていたら、私たちビジネスメディアでも取材すべきことはたくさんあったはず。なぜメディアは検証してこなかったんでしょうか? 私から質問するのは心苦しいのですが……。

池上 いささか厳しい物言いになってしまいますが、あえていいます。それはメディア側に立つ人間が、国際貢献のような問題は内容が難しいし、日本人と直接関係がないから、どうせ取り上げてもテレビだったら視聴率はとれないし、新聞や雑誌だったら部数増に結びつかないし、書籍だったら誰も買わないだろう、と決めつけてきたからでしょう。

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「池上彰さんに聞く!
なぜメディアは「わかりやすく伝える」ことができないんでしょうか?」の著者

山根 小雪

山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション、日経エコロジーを経て、2010年1月から日経ビジネス記者。エネルギーを中心に、自動車や素材など製造業を担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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