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あの事件と午前5時の六本木における「特別感」

2010年12月3日(金)

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 市川海老蔵をめぐるテレビの報道はちょっと異常だ。
 見ていて口の中に苦い唾が湧いてくる。
 要因はいくつかある。まずパネルに貼った紙を剥がしながら情報を小出しにして行くタイプのプレゼン手法が気持ち悪い。何をもったいぶっているんだ? 紙を剥がすときの効果音もダメだ。好きになれない。ほかにも、キャスター氏がパネルの文字を読み上げる時の香具師の口上みたいなイントネーション、出演者同士が苦笑をかわしあう様子をカメラが抜く時の絵柄など、数え上げたらきりがない。すべてが神経にさわる。

 一番閉口するのは、スタジオの中に流れている、あの舌なめずりをしているみたいな空気だ。
 あんまりだと思う。
 君たちは他人の転落がそんなに喜ばしいのか?
 いや、「ざまあみろ」と、内心でそう思うのはかまわない。
 私自身、率直に申し上げるに、そういう感想を抱かないでもなかったからだ。

 でも、仮に、心の中で「いい気味だ」と思っているのだとしても、画面に映っている人間は、その種の感情を押し隠さないといけない。これはたしなみの問題である以上に、メディアに露出している人間としての責任の問題だ。テレビ画面の中の人間は、数十万人の視聴者の情動を手づかみで動かしている。とすれば、彼は極力上品にふるまう義務を負っていると考えねばならない。

 でなくても、「ざまあみろ」みたいな感情は、匿名の掲示板や私的なテーブルで、ごく限定的にあくまでもプライベートな形で排泄すべきもので、テレビのような影響力の大きいメディアを通じてあけすけに開陳して良いものではない。

 こういうことを書くと
「イヤなら見なければいいじゃないか」
 と言ってくる人が必ず現れる。
 言いたいことはわかる。おっしゃる通りだ。嫌いな番組は見なければ良い。そうすれば不快な思いをせずにすむ。どうしてわざわざゴミ捨て場を凝視して不快がっているのか。その通りだ。

 でも、視聴者がスイッチをオフにするだけでは、テレビの問題は解決しない。
 露骨な演出が嫌だからとワイドショーを回避し、棒読みの女優を排除すべくドラマの画面を消し、粗雑なディフェンダーがプレーしているサッカーのゲームをスキップし、憶説を垂れ流す解説委員が常駐しているからという理由でニュースショーを暗転させていると、視聴可能な番組はひとつもなくなる。

「じゃあひとつも見なければ良いじゃないか」
 と、どうせ君らはそう言う。
 ぜひご理解いただきたい。そうすると、私は電車にさえ乗れなくなるのだよ。
 だって、車両には、腰パンの若いヤツが必ずいて、そういう連中は必ず大股開きで座席を独占しているからだ。
 もちろん、ファミレスにも行けない。
 スッピンの主婦グループが両手を叩いて大笑いをしているからだ。
 私はどうすればいいんだ? どこに行けばいい?
「そんなにこの世の中が嫌いなら、さっさとクビをくくればいいじゃないか」
 と、さらに君たちはそう言うのだろうか。
 あるいは、私は醜いものを見ないために、自分の目の中にボールペンを突き立てるべきなのか?

コメント23件コメント/レビュー

全く同感。海老象がどうとかどうだっていいが、芸能レポーターや、パネルめくる司会者が文化人面しているのは耐え難い。(2010/12/03)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「あの事件と午前5時の六本木における「特別感」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

全く同感。海老象がどうとかどうだっていいが、芸能レポーターや、パネルめくる司会者が文化人面しているのは耐え難い。(2010/12/03)

何が情けないって、日本を代表する元アスリートの成れの果てが、にやけた顔で話題作りのコメントをしてまでテレビタレントの立ち位置にぶら下がるしかない存在ってことです。日本、しっかりしろ。(2010/12/03)

>視聴可能な番組はひとつもなくなる。そうか・・・このコラムを自分が毎週見ている理由が分かりました。(2010/12/03)

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長