「辺境でかがやく」

消えかけてきた「商店街」が元気になった 

阿蘇神社門前町商店街が教えてくれたこと

  • 福井 隆

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2010年12月27日(月)

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 国の過疎集落研究会の報告によると、全国には6万2000もの過疎集落が存在している。そのうち、10年以内に2600集落が消滅する可能性があるという。「古老が1人なくなることは図書館が1つ消えること」。アフリカの古い言い伝えにあるように、それぞれの風土に寄り添い、作り上げてきた生活の知恵や文化が消え去ろうとしている。

 瀬戸際に立つ辺境。だが、時代に抗い、輝く人々は現実にいる。東京農工大の客員教授、福井隆氏はこういった“辺境で輝く人々”を目の当たりにしてきた。

 福井氏は年間250日以上、過疎集落に足を運ぶ「地元学」の実践者。これまで7年間、100カ所以上の現場で地域づくりの支援をしている。「地元学」とは、無い物ねだりではなく、今あるもので何ができるかを考える。そのプロセスを通して地域を元気にしていく学問である。

 多くの地域は「ここには何もない」と誇りを失っている。だが、それぞれの足元を見つめ直すことで、「何もない」と言われているところでも、未来への希望を作ることができる。地元学を通して、福井氏は地域住民に気づきを与えている。

 日本中を旅する「風の人」。ゆえに見える地域の未来。この連載では、辺境で力強く輝く人々を福井氏の目線で描く。地域を元気づけるにはどうすればいいか。住民の心に火をつけるにはどうすればいいか。集落に溶け込むにはどうすればいいか――。1つのヒントがわかるのではないだろうか。

 最終回の今回は熊本県阿蘇市の門前町商店街を取り上げる。買い物客の減少で寂れる一方だった商店街だが、今は観光客も訪れる着地型観光の拠点として再生した。門前町商店街の取り組みは、苦境にあえぐ全国の商店街に示唆を与えている。

地元紙に消えゆく灯と商店街が紹介された

 1999年10月10日、「消えゆく灯」という記事が熊本日日新聞に掲載された。阿蘇の鎮守、阿蘇神社の周辺にある門前町商店街の沈みゆく姿を記した記事だった。10年あまりが経過した今、この商店街は推定で20万人ほどの観光客が訪れる、活気あふれる商店街に姿を変えている。どこにでもある地方の商店街が、わざわざ訪ねて行きたい場所になった。通りには、18の湧水あふれる水基(みずき)が設置され、木陰にはベンチが用意され美味しい水を飲むことができる。そして、お店にはうまかもんが並び、おしゃれなカフェも新たにオープンするなど魅力あふれる場所となっている。

 これまで、このコラムでは特産品開発や地産地消レストラン、農業の再生、着地型観光と辺境で輝く人々を紹介してきた。最終回の今回は、全国各地で大きな課題になっている商店街の再生を扱う。主人公は財団法人阿蘇地域振興デザインセンターの坂元英俊・事務局長。門前町商店街の復活に道筋をつけた人物だ。

「阿蘇っていったい何だろう」

 坂元英俊氏は農業土木の計画設計技師として、国や県の綜合整備計画に関わってきた。その手腕は高く評価されていたが、自分の仕事にもどかしさも感じていた。町や村のハードの整備には何十億円、何百億円という大きなカネがつぎ込まれる反面、施設の運営といったソフト面はおざなりになっている。それに、コンサルという立場上、どんなにいい計画を作っても主体になることはできない。

阿蘇の雄大な自然と坂元英俊氏

 鬱屈とした思いを抱いていた坂元氏はコンサルタントに別れを告げ、「財団法人星のふるさと」の専務理事に就任した。福岡県八女郡星野村(現八女市)にある「星のふるさと公園」を運営している団体だ。ここで、坂元氏は数々の実績を残した。

 就任後、行政や商工会、財団がそれぞれに運営していた施設を財団運営に一本化。それぞれの施設がバラバラに集客していたものを財団法人に一元化した。さらに、マスコミを活用した情報発信や観光客を受け入れるための受け皿作りを展開、星野村のイメージを高めた。3年目の2001年には事業の黒字化を実現。福岡県で行きたい市町村というアンケートで第3位を獲得している。

 小さな村で財団運営と地域作りの実績を重ねていた坂元氏。ある時、阿蘇地域振興デザインセンターの事務局長職が全国公募される話を耳にした。阿蘇は自分の生まれ故郷。阿蘇地域12町村の連携による広域的な地域振興プランにも魅力を感じた坂元氏はすぐさま応募、そのまま事務局長に採用された。
 就任にあたって、坂元氏は考えた。「阿蘇っていったい何だろう」と。

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