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世代間の正義、不正義

贈与する[4]――正義について考える【5】

2011年1月13日(木)

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財産の贈与

 このように純粋な贈与というものは、きわめて困難なものであるが、人生においてまったく不可能というわけではない。いかなる返済を求めず、期待もしないで、ぼくたちは贈与することがある。それは遺産を残すときだ。生前贈与の場合を除いて、この贈与は返済を求めることがない。ぼくたちが残した遺産は子供たちに、遺族に、そして該当者がない場合には、社会に贈与される。

 社会に贈与される場合には、特定の人物ではなく、次の世代に財産が贈与されると考えることができるだろう。今回は遺産の贈与の問題をとおして、世代間正義と世代間不正義について考えてみたい。正義は現存する個人の間だけではなく、世代の間にも、あるいは遠い将来の人々との間にも成立すべきものなのだ。

「ゆずり葉」の詩

 まず有名な詩を一つ読んでいただこう。河井酔茗の「ゆずり葉」である。

ゆずり葉

河井 酔茗

子供たちよ。
これはゆずり葉の木です。
このゆずり葉は
新しい葉が出来ると
入り代わって古い葉が落ちてしまうのです。

こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちをゆずってー

子供たちよ
お前たちは何をほしがらないでも
すべてのものがお前たちにゆずられるのです
太陽のめぐるかぎり
ゆずられるものは絶えません。

かがやける大都会も
そっくりお前たちがゆずり受けるのです。
読みきれないほどの書物も
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれどー。

世のお父さん,お母さんたちは
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちにゆずってゆくために
いのちあるもの,よいもの,美しいものを,
一生懸命に造っています。

今,お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のようにうたい,花のように笑っている間に
気が付いてきます。

そしたら子供たちよ。
もう一度ゆずり葉の木の下に立って
ゆずり葉を見るときが来るでしょう。

 この詩が語るように、両親は子供たちに、それまで享受していたすべての物を贈与してこの世を去ってゆく。子供は何もせず、ただ生まれたというだけのことで、両親の財産のすべてを贈与される。そして財産だけではない。「かがやける大都会」に象徴されるように、それまで築かれた歴史的な遺産と文明のすべても、うけつぐのである。両親は何ももたずに、この世を去らなければならない。

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「世代間の正義、不正義」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官