「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

仕事なんて楽しいワケがない!
プロは客に尽くして喜ぶものでしょ

第74回:日産自動車 GT-R【開発者編】その2

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2011年1月13日(木)

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 みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。
 いやはや大変な寒さでございますね。山からはチラホラと雪便りが……どころじゃなくて、連日連夜大雪のニュースが届いています。豪雪でお悩みの方には大変申し訳がないのですが、この盛大な降雪はスキーヤーの私にとって実にめでたいことです。今シーズンは春まで心おきなく楽しめそう。私はこの週末から白馬で遅めのシーズンインとなります。今年もバンバン滑りますよ。
 クルマとジョギングに加えてスキーの記事を書くのはどうかなぁ……。え?そんなの書いても読者は喜ばない?日経ビジネスオンラインの読者諸兄は、ガチでスキーを楽しんでこられた世代だと思うのですがいかがでしょう。みなさま最近スキーには行っておられますか?

 さて、今回も先週に引き続き盛大に参りましょう。“スキーにも行けるスーパーカー”日産自動車「GT-R」の開発責任者、水野和敏氏の新春大放談第2弾です。

 今回もクルマの開発を軸に“仕事”にフィーチャーしたお話が続きます。

*   *   *

フェルディナント(以下F):水野さんはGT-Rを何のために作っているのですか?ニッサンという会社のイメージリーディングのため?宿敵ポルシェに勝つため?それとも自分ご自身の満足感のためでしょうか。

日産自動車 Infiniti製品開発本部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管 水野和敏氏

水野(以下水):どれも違う。ぜんぜん違う。俺はGT-Rをお客のために作っているんだ。会社のために作っているんじゃない。無論、俺のために作っているのでもない。そこを勘違いしてもらっちゃ困る。

F:お客のため……ですか。

水:そう。お客のため。これはクルマに限らないけれど。往々にしてエンジニアは“自分のため”にモノを作ろうとする。

F:職人気質というのでしょうか、自分が納得するモノが一番良いんだ、という感覚をお持ちのイメージはありますよね。

水:本当の職人ってお客を見ている人なんだよ。だって、一流寿司店の板さんって、自分で食うことなんか楽しんでないでしょう。お客をどれだけ喜ばせるかばかりを考えてるでしょう。それが一流ってもんです。
 二流以下の板前は、自分で握った寿司をお客と一緒に食ってビールなんか飲んで喜んでいる。フェルディナントさんの言う通り、多くのエンジニアは二流の板前の方向に走っていて、自分の作ったものに酔いしれている。

F:自分で握った寿司を一緒に食って喜んでいる。なるほど。

水:これじゃ、どうしようもないよ、本当に。

F:確かにいますね。そういう寿司屋さんが。しかも世間では“一流”と言われているお店が結構そうだったりする。

水:自分はお茶漬けを食っていればいいんです。何も自分が自分の握った寿司を食おうなんて思わなくていいんだ。そんな自分のメシに使う時間があるのだったら、お客のためにより良い寿司を握るために研究しようと言うのが一流の板前です。
 最近の若い人に高級車の開発をしろ、高級車のお客様の気持ちが分かるように勉強しろ、と指示すると、「だって俺、金ないですから、高級車に乗ったことがないですから分かりません」と平気な顔で言ったりするんだ。こんなヤツが本当にいる。もう最低。こんなヤツはクソ食らえだ。

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フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチです。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。



このコラムについて

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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