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視聴率よりも健康ばかり気にするTVプロデューサーの異常

ウディ・アレンを“ドクターショッピング”に駆り立てた心気症

  • 斉藤 さゆり,日本精神科看護技術協会(監修)

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2011年1月17日(月)

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 ストレスなどからココロを病むビジネスパーソンが増加し、社会問題化しています。メディアでも大きく報じられ、小説や映画などでも描かれるようになりました。

 このコラムでは、ココロの病を扱った映画を題材にして、日本精神科看護技術協会に所属し、日々患者に接している精神科看護師の解説を交えながら、誤解されやすいココロの病の本当の症状や対処法などを明らかにしていきます。

 今回に紹介するのは、名優ウディ・アレンが監督した『ハンナとその姉妹』というアメリカのコメディー。この作品の中で、どのようなココロの病が描かれているのか。名優たちのリアルな演技を通して具体的な病状を正確に把握し、理解を深めていきましょう。

 米ニューヨークのマンハッタンにあるテレビ局。プロデューサーのミッキーは、自分が担当するバラエティー番組の本番30分前に倫理委員会から録画シーンのカットを命じられて「偏頭痛がする」と漏らし、出演者が突然「気分が悪くて番組に出られない」と言い出したのを聞くと、「胃が痛む。薬はないか」と声を上げる。

 そんなミッキーの最大の関心事は、面白い番組を作ることでもなければ、視聴率を上げることでもない。本人はこう言う。

 「自分の健康が一番、心配だ」

 これは、米国を代表する映画人、ウディ・アレンの監督作品『ハンナとその姉妹』(1986年に米国で公開)の1コマだ。映画は、ニューヨーク生まれの3姉妹と周囲の人々が織り成す人間模様を描いたコメディー。ミッキーは、3姉妹の長女ハンナ(ミア・ファロー)の元夫で、監督のアレンが自ら演じている。

 そのミッキー。本人には全く自覚がないのだが、実は、精神疾患の「身体表現性障害」というカテゴリーに属する「心気症」にかかっている。

健康への「こだわり」が病気への「恐怖」に変貌

 実際は病気ではないのに、自分が感じる身体の不調を深刻に受け止めて「絶対に大変な病気に違いない」と心配する。果てには、その思い込みから逃れられなくなってしまう――。心気症とはそういうココロの病だ。

 大学病院の精神科、看護学校専任教員(精神看護学担当)を経て、現在は横浜市のさいとうクリニックに勤務する精神科看護師の松井洋子さん(日本精神科看護技術協会所属)によると、心気症の症状には次のようなものがある。

・頭痛、筋肉痛、めまい、しびれ、吐き気、倦怠感といったありふれた身体の不調を深刻にとらえ、「自分は重い病気にかかっている」という考えを強く抱く。

・病院での検査で異常がないと分かっても一向に安心できず、何軒もの病院を渡り歩くいわゆる「ドクターショッピング」を続ける。

・絶えず病気のことが頭から離れないため注意力が低下し、仕事や生活に支障を来すようになる。

 では、ミッキーの場合はどうか。

 メディアの世界で慌しい日々を送るうちに聴覚の異常とめまいを感じるようになり、親の代から通うかかりつけのクリニックを受診する。簡単な検査の後、医師に「右耳の聴力が落ちている」と言われ、総合病院で精密検査を受けるよう指示されたことから、心気症の症状が一気にエスカレートしていくのだ。

 まず、クリニックを出た途端、別の病院の主治医に電話をかけ、難聴の原因としてどんな病気の可能性が考えられるかを聞く。そして、返ってきた「最悪の場合は脳腫瘍」という一言に敏感に反応。勤務先のテレビ局に戻ると、同僚の女性スタッフに「めまいがして気分が悪い」「耳鳴りがする」「脳腫瘍の症状がある」とまくし立てる。

[松井看護師の解説]

 ミッキーはかかりつけの医師に、「精密検査は用心のためで、異常が見つかったわけではないので心配ない」と説明を受けました。にもかかわらず、すぐに別の医師にセカンドオピニオンを求めます。頭の中が精密検査に対する不安で一杯になってしまったのに加え、「異常はない」と診断を下したかかりつけの医師への不信感から、そうせずにはいられなかったのでしょう。

 心気症の人は、健康へのこだわりが病気への恐怖に変わっていて、医師に病気を見つけてもらいたくて病院に行きます。「どこも悪いところはない。大丈夫」と言われても、納得も安心もしません。「病気を見落としているのではないか」「患者に隠し事をしているかもしれない」と、逆に医師に対して不信感を抱くのです。

 ミッキーは同僚の女性に自分の症状をこと細かに説明するけれども、これも心気症の患者さんの特徴です。医師や周囲の人に症状を執拗に訴えて、自分が病気であることを主張しようとするんです。

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