「“う”あがり美人になりたくて」

Vol.9 「降格になっても、あなた自身は何も変わらないよ」と言われて、素直に頷けますか?

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2011年1月21日(金)

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★本連載のタイトルと、うつ病を「う」と表記していることについては、こちらをご覧下さい。また、うつ病については「お父さんが『眠れない』のは、心の問題ではない −−自殺対策について精神科医ができること」の記事も、ぜひ(担当編集Y)

 みなさま、こんにちは。すっかりごぶさたしてしまいました、“う”あがりOLです。

 新しい年を迎えて、いかがお過ごしですか? 今年の抱負は何とお決めになりましたか? 私は今年、「う」のために遠ざかっていた趣味の書道を再開しようと思っています。好きだった趣味に興味を持てなくなってしまうのも「う」の特徴。そうなってしまう前に、趣味の世界を広げ、深めて、自分自身をリフレッシュさせてあげるのも、効果的な予防策のひとつだと思います。

 さて、今回は「降格」のお話です。

担当編集Y:「げげっ!? 降格? うあがりOLさんが!?」

:「実はそーなんですよ。なかなか受け入れるのは大変でしたー」

 会社に勤め、順調に行けば、平社員→主任(係長)→課長→部長代理→部長という具合に昇格していきます。そして、その逆が「降格」です。言うまでもなく、マイナスの評価ということです。

 「う」になる前、私は「出世や昇格に疎い」タイプだったと思います。

 取り立てて優秀なわけでもなく、人に抜きん出て能力があるという自覚もない凡庸な人間だったので、出世や昇格を期待するよりどころがなかったのです。あるとすれば、「できれば上司をガッカリさせたくない」という、ごく人並みの感覚でした。マジメに頑張って働いていれば、いつか上司も認めてくれるだろうと、そんな風に考えていました。

 それでも、仕事大好き女子だった私は、昼夜を問わず、土日を問わず働き、いつしか「うの湯」にどっぷりと浸かることになってしまったのです。

 「う」で3年半も会社を休んだ私は、先日、仕事に復帰してほぼ1年後に、「降格」になりました。う友たち(「う」体験者の仲間たち)の中には、復帰と同時に「降格」になったという仲間もいたのですが、彼らが淡々としていたので「そんなものなのかな」ぐらいにしか受け止めていませんでした。

 でも、実際に自分の身に降りかかってみると、それは、乗り越えにくいハードルだったのです。

“う”あがりの「使い方」が会社にも分からない

 復職して3カ月が過ぎた頃でした。
 私が勤めている会社では、半年に一回、自分が取り組んだ業務の内容を申告し、上司と面談することになっています。

 しかし、
「取り組んだ業務の内容と言われても…」
 私は頭を抱えてしまいました。

 なぜなら、病気から復帰した直後の3カ月間、会社から与えられた仕事はほとんどありませんでした。「以前自分が行った業務の棚卸しをせよ」と言われたこと、ぐらいだったでしょうか。過去に担当した業務をまとめて整理するのに1週間もかからなかったと思います。

 その後、仕事が全く無かったのです。どのくらい無かったかと言えば、パソコンに向かって無為な時間を過ごすことに耐えかね、恐る恐る「自分で企画を立てて動いてみてもいいでしょうか」と、上司に持ちかけ、許可をもらってちょこちょこと社内に売り込みに回るほどでした。

 会社側に立って考えれば、「う」あがりをどう扱ってよいか分からないのだと思います。ラインに入れて仕事をさせ、万が一体調を崩せば、元も子もありません。かといって、「う」あがりにおあつらえ向きの仕事は、そうそうあるわけではなく…。本音を言えば「仕事を任せるなら、無理をさせても不安がない相手」でしょうね。で、不安の大きい「う」あがりには「何もさせない」という状態になることが多いようです。

 この「何もしなくていい=仕事が何も無い」という状況がどれほどツラいか。普通に働く皆さんには想像もできないでしょう。

「え、そんなのラッキーじゃん」

 と思われるかもしれません。でも、いま抱えている仕事を全部、やらなくていい、何もしなくてもいい、だからといって会社を休んではいけない、外出もダメ、電話もダメ。許されるのはパソコンをいじることぐらい、となったら?

 1日は果てしなく長く、1分1秒が過ぎるのを気が遠くなるような思いで待つことになるのです。何もせず、1日8時間を机の前で過ごすことが、どれほどツラいか。しかもさらに、それは何時と期限を切られず、延々と続くのです。

 これに直面して「自分は会社には必要の無い人間なのだ」「自分には何の価値も無いのだ」と落ち込む日が続いたのを覚えています。これは「う」あがりの復帰直後としてはイタい洗礼でした。

 そんな折の「評価シート」提出。さて、私は「自分が行った業務」欄をどうやって埋めたらいいのでしょう? 

 途方に暮れつつ、どうにかこうにか、少ない事実に修飾語をたんまりと乗せてシートを埋め、提出。しばらくして、上司との面談がありました。

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著者プロフィール

“う”あがりOL(うあがりおーえる)

仕事大好き女子だった雑誌編集部時代に働き過ぎて“う”を発症。「まさか、私が?冗談でしょ?」と驚きつつ、どっぷり“う”の湯に浸かり休職。リワークプログラムに通って昨年9月に職場復帰するも、いまも再発が怖い小心者のOL。趣味は書道、中国語。座右の銘は「七転び八起き」。



このコラムについて

“う”あがり美人になりたくて

 厚生労働省の患者調査によると、2008年10月の時点で「うつ病」患者数は104万1000人と、100万人を超えました。身近なわりに軽く扱える病気ではないし、患者、周囲ともに誤解も多いのが“う”です。個々の状況に応じて考えねばならない事も多い。それゆえ、総論として語るより、個人の体験としてお話しする方が、それも、本人ゆえに許される範囲で、深刻になりすぎることなく、できることなら笑って読んで頂けるようなしつらえを考えました。それが「“う”あがり美人」、というわけです。
 湯に入って出てきて「美人」にまでなったかどうかには実は自信はいまいちありませんが、とあるOLが、うつという病気にかかり、復職するまでの経緯と、それを通してこういう考え方もできるようになった、そのひとつの実例として、読んで頂ければ幸いです。

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