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愛ある引用がなかったら、ただの発明品に過ぎない

『民宿雪国』で話題。ポストバブル世代の作家が語る、新しくて古い小説論

  • 外薗 祐理子

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2011年2月1日(火)

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民宿雪国』樋口毅宏著
祥伝社 1470円
ISBN978-4-396-63352-3

 昨年12月中旬に発売された樋口毅宏著『民宿雪国』(祥伝社)が話題になっている。

 昨年末、八重洲ブックセンター本店ではフィクション部門で齋藤智裕(水嶋ヒロ)氏の『KAGEROU』(ポプラ社)に次ぐ2位となった。日本全国に店舗を持つジュンク堂書店でも1月中旬に総合部門でベストセラー入りしている。大々的な宣伝はしておらず、実際に読んだ書店員からの支持が好調な売れ行きにつながっているようだ。

 作者である樋口毅宏氏(39歳)は元編集者で、2009年『さらば雑司ヶ谷』でデビューした。本作が3作目に当たる。

 本のタイトルからはノスタルジックな内容を想像するが、さにあらず。国民的画家にして、寂れた民宿のあるじでもある主人公・丹生雄武郎の生涯について、様々な人物の証言を取り上げつつ、スリリングにひも解いていく。樋口氏に創作の意図を尋ねた。

――今回の作品も、古今東西の映画や小説、音楽、雑誌記事などのオマージュ(過去の名作と部分的にあえて表現を似せる技法)をちりばめる作風が健在ですね。

樋口 毅宏氏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京・雑司ヶ谷生まれ。出版社勤務を経て、2009年『さらば雑司ヶ谷』(新潮社)でデビュー。他の著書に『日本のセックス』(双葉社)、『雑司ヶ谷R.I.P.』(新潮社、2011年2月出版予定)がある。(写真:稲垣純也、以下同)

 浅草キッドの水道橋博士がツイッターで「引用ショー」と絶賛してくれたのですが、ほかの方からも「すばらしいパッチワークだ」とかね(笑)。よく言われますよ。

 この小説を書く原動力になったのは、白石一文さんの『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』です。本当に凄い小説で、自分もああいうものを書きたいと思いました。

 引用が多いのは、自分というものがないからだろうと思います。「自分なくし」というやつです。ほら、これもみうらじゅんさんの言葉ですよね。

 僕は影響されやすい人間です。小林よしのりの漫画を読めば「太平洋戦争で日本だっていいことをしたんだよ」と思うし、森達也の本を読むと「日本は戦時中になんてひどいことをしたのだろう」と思います。それぞれの作品でよかった部分を蓄積しているんですね。

 自分の1作目と2作目では、小説に影響を与えた作品を巻末に列挙しました。でも、はっきり言いますけれど、僕がバカ正直に書いているだけで、引用自体は、ほかの作家もミュージシャンも映画監督もみんなやっていますよ。僕自身、他人の小説や映画に関して「この作品の影響を受けているだろう」とか「この部分はあの作品を下敷きにしただろう」と思うことがたくさんあります。皆さん、知らぬ顔して「自分のオリジナルだ」というようにふるまっていますが、「黙っていて嘘つきだなあ」と思いますね。

――今回は、影響を与えた作品のリストを外したのはなぜですか。

 まじめにやろうかなと思ったんです。いつまでも色物扱いになってしまうのではないかと思ったので、編集者と話して、参考文献を記す程度にとどめました。今回はあとがきを入れたので、うるさくなってしまうかなという考えもありました。

 でも、今年2月刊行予定の次回作『雑司ヶ谷 R.I.P.』(新潮社)では、また影響を受けた作品を列挙していますよ。作品に合わせて決めようと思っています。

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三品 和広 神戸大学教授