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「加速せよ!」 鴨長明が語る素晴らしきムーバブル・ライフ

『方丈記』鴨長明著

2011年1月25日(火)

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大好きな音楽のように

20代の終わりごろ、ぼくは毎日、『方丈記』を読んでいた。

一日一回、最初のページから最後のページまで。
本文はとても短いから、たいして時間はかからない。
家の中で、電車の中で、待ち合わせの店の中で。
いったい何週間続いただろう。

まるで好きな音楽を聴くみたいだった。
好きな曲なら、毎日聴いても飽きることがない。それどころか、聴くたびに身の内に新しい力が湧いてくる。
文章も同じだ。
文章にも流れがあり、流れにはリズムとメロディがある。だからぼくたち読者は、内容やその理解は別にして、音楽を聴くように、何かを受け取ることができる。

ぼくは『方丈記』の文章の流れに乗ることで、毎日、得るものがあったのである。

『方丈記』の有名な書き出し

『方丈記』とは、もちろん鎌倉時代の歌人、鴨長明(1155-1216)が書いたエッセイのことだ。
読んだことがない人でも、その書き出しは知っている。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。

長明は、たいへんな力を込めて、「いつまでも在り続けるものはない」と言っている。
すべては時間とともに流れゆく……これは仏教の「無常」の教えだ。

しかし長明は、「無常」という概念ではなく、もっと具体的な話題に入ろうとしている。
長明は流れ去る河の水にたとえて、いったい何が「在り続けることはない」と言うのだろう?

引用文の続きを読もう。

世中[よのなか]にある人と栖[すみか]と、又かくのごとし。

『方丈記』において「在り続けることはない」というのは、「家」のことだ。
ときおりは人の命のことにも触れる。
しかし、いくつもの具体例を挙げながら、『方丈記』はその前半部分を使って、「家を建てても、しあわせにはなれない」と説いているのである。

家を建てるのは間違いだ

都会に建てた家は、「火事」「辻風」「地震」などの災害によって失われる。突然の「首都移転」によって、新しい町は整わず、捨てられた町は荒廃する。長明は「飢饉」にも言及するが、その際も「家を壊して薪にして売り、食糧に換える」エピソードが語られている。

都会に家を建てることのデメリットは、天災、人災の恐れだけではない。
隣近所との人間関係だって難しい。権力者の隣に住むと気を遣うし、金持ちの隣に住むと気が引ける。
庶民的な土地に家を建てればもう少し気楽に住めるだろうが、小さな家が集まっている地域では火災の危険性が高くなる。

では、郊外に家を建てようか。
いや、やはりだめだ。
郊外に住んでも、煩わしい人間関係はついて回る。それに強盗に襲われるかもしれない。

結局どこであれ、家を建てて、いいことはない。
家屋も人間関係も、どうしても壊れるもの。
家を建てて定住するというのは、いわば、止めようのない河の流れの中にあって、何としても流されまいと無理に踏ん張り続けることなのである。

答えは「方丈の家」

こうして『方丈記』は前半で「家を建ててもろくなことがない。どうしたらいい?」と問題提起する。

 この「生きるための古典」、岡さんが言うところの「できそこない」のためのブックガイドが、この度、ついに書籍になりました。「日経ビジネスオンライン」に於いては異色のこのコラムが本の形になれたのは、ひとえに、本欄の「垂直の言葉(前回の記事参照)」を愛して読んで下さった皆様のおかげです。岡さんになりかわり、担当編集Yより深く感謝を申し上げます。
 本のタイトルは『強く生きるために読む古典』。本連載の中から岡敦さん自ら厳選した回を、さらに大幅に加筆しています。ぜひご覧下さい。そして願わくば、貴方の友人として、本棚の中に永く留まりますことを。(Y)

コメント5件コメント/レビュー

いつも楽しく読ませてもらっています。敬遠しがちな古典を読んでみたいと思う気にさせられます!わたしも早速「ぽちっ」と、してきました。(2011/01/27)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつも楽しく読ませてもらっています。敬遠しがちな古典を読んでみたいと思う気にさせられます!わたしも早速「ぽちっ」と、してきました。(2011/01/27)

いやぁ、面白い解釈ですね。スピード感を見出すとは!授業で習って読んだ時、冒頭の部分から、さざめく水面の光を連想した私は哲学や無常感からはほど遠いものでしたから。そういう感性もアリですね。そして思いだした事。ある有名な文芸評論家が、徒然草を「下らん、世捨てジジイのたわ言だ」と評したのを読んで爆笑しました。学校ではホメちぎるような徒然草を…と口あんぐりにもなり、こういう解釈もできるという楽しさを知りました。そんな学生時代の感覚が今、蘇って楽しかったです。もうン十年前のことですが(笑)(2011/01/26)

最後まで読みましたら、何となく「Born to be Wild」をBGMにハーレーで疾駆するおじさん達の画が思い浮かびました。(2011/01/25)

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