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フェイスブックで友達何人できたかな

2011年1月28日(金)

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「フェイスブックは始めないんですか?」
 と、昨年の秋以来、何人かの知人に同じことを聞かれた。
 答える代わりにオウム返しをしてみる。
「そちらは?」
「…いや。まだです」
 なるほど。興味はあるけれども、踏み出せない。誰かに先鞭をつけてほしい……そういうことなら私と同じだ。臆病なオウム同士の応答。デクレッシェンドな同語反復。曲がったクチバシを持つ鳥の鳴き声。

 こういう時は、粗忽者の知り合いに電話をしてみる。
「やってますよ」
 思った通りだ。やっぱり手を出している。こういうものを放っておける男ではないのだ。ガチョウはガチョウ。いつも歌っている。があがあ。
「どう?」
「面白いですよ。オダジマさんもぜひ」
 うむ。でもなあ。オレ、ミクシィで懲りてるし。
「アレとはずいぶん違いますよ。イトも引かないし」
 イト? 意図のことか? それより、塩漬けにしてあるツイッターを再生させるのが先決かもしれない。だよな。フェイスブックは、ツイッターを軌道に乗せてからの話だ。

 いや、それ以前に、ブログを再開するべきじゃないのか? いくらなんでもあんまり放置しすぎだし。
 ……というよりも、本当のことを言えば、ウェブ上の連載を停滞させているのが一番の問題で、そこのところのデッドロックが……と、思いは、いつもの堂々巡りをなぞりつつ、想定通りの深みにはまっていく……さよう。2010年は停滞と逡巡の一年だった。定期で動いていたのは、ほぼこの連載のみ。あとはろくに仕事をしなかった。反省せねばならない。そして、今年こそ気力を再起動させなければいけない。

 年が明けてから、年長の知人とさる用事で鎌倉までご一緒した。
 帰り道の雑談の中で、先方の紳士が
「今回の紅白は面白かった」
 と、おっしゃられた。
 ちょっと意外だった。私には少しも面白くなかったからだ。

「ツイッターを始めたからかなあ」
 と、彼は言う。
「ああいうものは大勢で見ないとね」
 と。なるほど。それで合点が行った。

 私は、例年、紅白を見る時には2ちゃんねるの実況板を立てることにしているのだが、昨年末は、実況民の質が荒れてきている(「○○(←差別語)ざまあ」とか、「売国××氏ね」とか、そんな書き込みの比率が急増している)ことにうんざりして、単独で見たのだ。
 と、どうにもつまらない。何の臨場感もない。
「バイヨンってなんだ?」
 と思っても、尋ねる相手がいない。咳をしても一人。家族の者は各々の部屋でそれぞれの番組を見ている。あるいはスカイプ用のヘッドセットを装着して、テレビを無視している。

 要するに紅白歌合戦の退潮は、番組の劣化よりも、お茶の間の衰退により深く起因していたということだ。送り手の問題ではない。受け手の側の問題だったのだ。その証拠に、ツイッターであれ匿名実況掲示板であれ、画面のこちら側に共同視聴する「場」が共有されていれば、あれは十分に楽しい番組になるのだから。

 ということは、もうすこし敷衍して、歌謡曲の衰退は、聴き手であるわれら日本人の全般的な孤立という状況に答えが求められる問題であるなのかもしれない。なんとなれば、「うた」は、元来、単独で聴くものではなく、複数の人間が共に歌う共感の言葉であるべきものだからだ、と、そんな話をしながら、私たちは横浜で別れた。うむ。私はもっとナマの会話をする機会を持つべきなのかもしれない。

コメント33

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「フェイスブックで友達何人できたかな」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官