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私の「もやもや」を晴らしてくれたザッケローニ監督

2011年2月4日(金)

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 火山や鳥インフルエンザの話は、専門家にお任せするとして、今回は、久々にサッカーの話をしたい。
 自分がサッカーの専門家だと言っているのではない。
 私はサッカーファンだ。火山マニアでも動物医療通でもないが、サッカー好きではある。だから、アジアカップ優勝みたいな話題には食いつかざるを得ない。そう思って、宮崎県の皆さんにはご容赦いただきたい。

 ザッケローニ監督率いるところの代表チームを「ザッケローニ・ジャパン」とせずに「ザック・ジャパン」としたのは、おそらく「ザッケローニ・ジャパン」と発音した場合の語呂の悪さを嫌ったからで、ほかに深い理由はないのだと思う。
 でも、悪気が無いのだとしても「ザック」という呼びかけ方は失礼だと思う。少なくともメディアの人間が代表監督に向けて使って良い呼称ではない。

 親しい友人や知人が「ザック」と呼ぶのはかまわない。
 特に親しくなくても、ザッケローニ氏が「コール・ミー・ザック」と言ったのなら、そう言われた人間は、その場に限って、彼を「ザック」と呼ぶことができる。
 ファンが親しみと敬意をこめて「ザック」と呼ぶことも、時と場合によっては許される。
 スタジアムに集まった観客が
「ウィー・ウォント・ザック」
 と、唱和することは、先例からして、失礼にはあたらない。イタリア語で「われわれはザックを支持する」をどう言うのか私は知らないが、そのフレーズをコールすることもたぶんアリだ。

 でも、スポーツ新聞がヘッドラインで「ザック」の三文字を大書することや、ニュースショーのキャスターが「ザック采配」についてあれこれ語るのは、間違いのはじまりになると思う。
 というのも、「ザック」と呼んだ瞬間に、取材者と取材対象の距離感が曖昧になり、批評する者とされる者の間の緊張感が消失してしまうからだ。
 メディアの人間は、代表チームの監督に対してきちんとした距離感を保っていなければならない。

 マスコミは前の監督の岡田さんについても「岡ちゃん」という呼び名で呼ぶことを好んだ。
 これも良くなかった。
「岡田さん」「岡田監督」「岡田氏」と、しかるべき距離(と最低限のリスペクト)をとっていなかったおかげで、「岡ちゃん」関連の記事は、どこか無責任だった。
 岡ちゃんに甘えた記事。岡ちゃんをあなどった記事。岡ちゃんをただのネタとして消費するだけの原稿。そういう駄文がいかに多かったことか。
 ザッケローニ監督に対して、同じような馴れ合いが生じる事態はぜひ防止せねばならない。

 対監督に限った話ではない。
 誰であれ、「佑ちゃん」「ダル」「愛ちゃん」「真央ちゃん」「遼クン」「ウッチー」「浅尾きゅん」「ミキティー」と、そういう距離感のデタラメな呼称を使っている限り、適正な批評を含んだ記事を書くことはできない。

 というよりも、取材対象に愛称で呼びかける形式の語法は、元来、芸能マスコミのレトリックであって、マトモなジャーナリストが採用して良いはずのものではない。

 「裕ちゃん」「ひばりちゃん」の時代から、芸能マスコミは、タレントを「ちゃん」付けで呼んできた。恋人や娘に語りかける時と同じ、下の名前だけを呼ぶ「愛称」が、彼等の呼びかけ方の基本で、「愛称」がもたらす「親しみ」と「距離の近さ」を芸能記者は何よりも珍重する。だから、タレントの側もそう呼ばれることを望む。芸能界というのはそういう場所なのだ。彼等はプライバシーを放棄しているのではない。芸能人にとっては、あらゆる場所が私的な空間なのであって、スターというのは、すべての人間との間にプライベートな関係を取り結ぶことができる存在なのだ。そうでなくても、ファンとの間にプライベートな妄想を紡ぐことが彼等の仕事ではある。

コメント33件コメント/レビュー

本題には関係なくてなんですが、ザッケローニの「次」の監督が決まったら、絶対あちこちで「ザックとは違うのだよ、ザックとは!」とつぶやかれることでしょうね。(2011/02/07)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「私の「もやもや」を晴らしてくれたザッケローニ監督」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

本題には関係なくてなんですが、ザッケローニの「次」の監督が決まったら、絶対あちこちで「ザックとは違うのだよ、ザックとは!」とつぶやかれることでしょうね。(2011/02/07)

いつも楽しみに読ませていただいております。特に今回の導入部分である「メディアと呼称」の問題は、とても興味深く読ませていただきました。私も「岡ちゃん」「ザック」には違和感を感じてはいたものの、その中身が分析できずにおりましたので、コラムを読んですっきりすることができました。今後の記事にも期待します。(2011/02/07)

小田嶋 隆さんが、私のもやもやを吹き飛ばして下さいました。起き上がれ日本、Dream Gateで掲載している私のブログ(elk.dgblog.dreamgate.gr.jp)でも何度となくマスコミへのメッセージを書きましたが、日本国は自分たち自身に挑戦をする時だと思います。相手を認める事(Recognition)敬意を払う事 (Respect)感謝をする事 (Appreciate)人間には、何故か自分にして欲しい事を人にしない意地悪な心がある。運動部で、先輩にやられて嫌だったくせに、後輩が入って来ると同じ事をする。会社では、「俺がお前の年の頃はな、、、」と、自分が若い時にチャンスを貰えなかった恨みを、部下にはらすこともある。自分が接して欲しいように、相手に接することから初めてはどうでしょうか?マスメディアに礼節と正義をもたらすにはどうしたらよいのでしょうか?自分に答えが無いので、日経ビジネスオンラインに期待を致します。シカゴ不動産(2011/02/07)

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三品 和広 神戸大学教授