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「それでいい!」と、カントがメガホンで叫んでいた

『啓蒙とは何か』イマニュエル・カント著

2011年2月10日(木)

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いっさいを押し流していく空虚な河

何が流れているのだろう、ここに大きな流れがある。
水もなく、音もなく、何もない。
けれども、とどめようのない勢いで、ぼくの世界のいっさいを押し流していく、この空虚な河のようなもの。

ぼくは、流れから抜け出せない。
抵抗のそぶりさえ見せられず、ただ流されていく。
このまま、おしまいまで流されていくのだろうか。

どうすれば、いいのだろう。
流されるのをやめ、自力で泳ぐことはできないだろうか。
何とかして、ほんの少しでも。

一生懸命に考えていた。

それは、高校時代のこと。
きっと多くの人が同じ経験をしているだろう。

自分を動かす言葉だけが「思想」だと考えた

ぼくは「思想する」ことに決めた。

「思想」とは何か。
それは、「自分の生(人生、生活、生命)をコントロールする言葉」のことだ。
「思想する」とは、「言葉によって、自分自身に明確な方向を示し、実行するための力を与えること」だ。

そんなふうに考えていたから、たとえどれほど高度な理論に精通していても、もしその言葉が自分の生に少しも影響しないのなら、それは「思想」ではないと思った。
目に触れ耳に入る何もかもを的確に分析し説明することができるとしても、それがどこまでも他人ごとの話なら、やはり「思想」ではない。

反対に、自分の生をコントロールする役に立つのなら、ありふれた、つまらない言葉であっても、それは「思想」だと思った。

遠い岸からメガホンで

要するに、高校生のぼくは、自分の言葉で考えて、考えたとおりに人生を生きようと思ったのだ。
だが、知識も精神力もないぼくに、そんなことが本当にできるだろうか?

できるはずもなかった。
実際には、泳げもしないのに浮き袋を捨てて河に飛び込み、自力で泳ぐどころか、浮いたり沈んだりしているだけの、ただのマヌケだった。
息苦しさにあえぎながら、ぼくはいったい何をやっているのだろうと思った。
持っていたわずかの力も使い果たして、溺れてしまいそうだった。

そのとき、予想もしていなかったタイミングで、遠い岸からメガホンで声をかけられた。

「よし、そうだ、自分で泳げ、それでいい!」

応援されただけだ。
何をどうしろという指示にもアドバイスにもなっていない。
でも、元気が出た。
ありがたかった。
そのときのぼくに必要だったのは技術指導ではなく、とりあえず元気を出すことだったから。

『啓蒙とは何か』を読む

応援してくれたのは、ドイツの哲学者カント(1724-1804)の『啓蒙とは何か』だった。

この本には申し訳ないけれど、カントの主著『純粋理性批判』を読もうとして歯が立たず、「しかたがない。もっと薄く、もっとわかりやすそうな本から手をつけよう」と、安易な気持ちで手に取ったのだった。

結局、この本は『純粋理性批判』を理解する助けにはならなかった。
しかし、カナヅチのくせに自力で泳ごうとしているぼくを励ましてくれたのだから、もっと大事な面で、とても助けになったのだった。

啓蒙主義とはなにか?

カント(1724-1804)は18世紀ドイツ、啓蒙主義時代の哲学者だ。
啓蒙主義とは、人間の知性や理性をとことん信頼する考え方のことである。

 この「生きるための古典」、岡さんが言うところの「できそこない」のためのブックガイドが、この度、ついに書籍になりました。「日経ビジネスオンライン」に於いては異色のこのコラムが本の形になれたのは、ひとえに、本欄の「垂直の言葉(前回の記事参照)」を愛して読んで下さった皆様のおかげです。岡さんになりかわり、担当編集Yより深く感謝を申し上げます。
 本のタイトルは『強く生きるために読む古典』。本連載の中から岡敦さん自ら厳選した回を、さらに大幅に加筆しています。ぜひご覧下さい。そして願わくば、貴方の友人として、本棚の中に永く留まりますことを。(Y)

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官