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「顔」が見えない国のメディアと社会

2011年2月25日(金)

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 朝、目を覚ますと、まずパソコンの電源をオンにする。

 で、2チャンネルの「視聴率提供専用スレッド」(以下、同掲示板に集う視聴率ウォッチャーの慣例に従って「視スレ」と略称する)をチェックする。週刊誌にテレビ番組批評コラムを連載していた頃からの習慣だ。

 その、「視スレ」に、つい2~3日前、異変が起こった。突然、情報の提供が途絶えたのである。悲劇だ。行きつけの蕎麦屋が閉店した時みたいな衝撃。オレは明日から、どうやって朝の時間を過ごしたらいいんだ?

 経緯を紹介する。
 そもそも「視スレ」の視聴率データは、情報提供者の「リーク」に依存しているものだった。
 情報源は、いくつかあった。以下、箇条書きにする。

1. 地上波民放局のうちの3局(フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日)は、ゴールデンタイム(G帯)およびプライムタイム(P帯)の自局の視聴率情報を電話経由で提供している。音声はテープ録音のものらしい。毎朝午前9時から9時半頃、この音声情報を電話確認して掲示板に書き込むボランティアが何人かいて、提供のある局については、おおむね10時前には数字が揃うことになる。

2. 関東地方の地上波テレビ各局(NHK教育は除く)のG帯&P帯の視聴率について、毎日その数字を公開しているブログがある。ブログ主はおそらく業界人。このブログは、情報提供者のプライバシーを配慮して「視スレ」民の間では「某所」と呼ばれている。「某所」の更新時間にはバラつきがあって、更新が滞る日もある。が、おおむね午後3時には前日の視聴率が書き込まれる。視スレでは、伝統的に、この「某所」提供のデータが、最も確実な視聴率情報として、確認用に使われている。

3. スポーツ関連番組(G帯P帯に放送されたものだけでなく、全日、深夜帯の番組も含む)の視聴率については、ある民放局の社員(高名な元ラグビー監督)が、局のホームページ内の個人ブログの中で、随時数字を書き込んでいる。この数字は、特にサッカーファン、野球ファンに珍重されている。

4. 2008年の12月頃から、「数字禿」ないしは「禿」と名乗る人物が、地上波の全局全時間帯の視聴率データを落とすようになった。データの書き込みは、時に中断する時期もあったが、断続的に2011年の2月まで続いた。「視スレ」民は、狂喜し、彼を「禿神」「神」と呼んでまつり上げていた。

 以上が、私の知る、この5年ほどの「視スレ」の日常だった。

 ところが、2月21日の夕刻、「NHKが大津放送局放送部の男性職員(27)を、視聴率データを契約に反してインターネットの掲示板に投稿したかどで諭旨免職処分にした」というニュースが流れると、事態は一変する。

1. 電話音声による特定民放局の自局視聴率情報は当面継続中。ただ、これについては「3月いっぱいで終了」という噂が囁かれはじめている。

2. 「某所」は、2月22日に閉鎖。サイト自体も消滅。データはオールデリート済み。別れのあいさつもなし。

3. ラガーマン社員は、2月23日のブログに「視聴率、レッドカード」というタイトルの記事を掲載して困難な状況を示唆。文面は、以下の通り。「毎日書く視聴率について、ビデオリサーチから警告が出されていて、ついにレッドカード。今後は特別な放送についてのみ視聴率を書けるか」

 数時間後、ラガーマン氏は、午前中の書き込み(レッドカード)を丸ごと削除。さらに、過去の視聴率データも全消去。当日のブログは、「生ゼリーだぞ!」というタイトルのスイーツネタに差し替えられる。なんたる弾圧臭。

4. 報道された書き込み時期、内容から、諭旨免職になったNHK職員が「禿」氏であったことは、ほぼ確定。「視スレ」には、感謝と惜別のメッセージが溢れる。ありがとう、そしてグッドラック&グッドバイ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「「顔」が見えない国のメディアと社会」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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