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日本語をめぐるドタバタ劇『ら抜きの殺意』 ~「見れる」「来れる」は正しいか?

  • 折野 冬葱

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2011年3月7日(月)

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「1000円からお預かりいたします」。から、ってなんだ、からって。
「こちら、ハイボールになります」。じゃあ今は何なんだよ。いつハイボールになるんだ?
「全然入れますよ」。全然の後は否定形!

ら抜きの殺意』永井愛著、而立書房、1575円

 日々の暮らしの中、他人の言い回しや言葉にカチンとくる方は多いだろう。

 「とんでもございません」事件をご存じだろうか。かつて、ミス日本になった山本富士子さんがインタビューで「とんでもございません」と言ったところ、ミス日本が日本語を間違ったと大騒ぎになったそうである。

 同じく「申し訳ございません」も、当時は間違いだったらしい。「申し訳ない」という形容詞ひとことなので、正しくは「申し訳ないことでございます」となる。だが、昨今は「申し訳ございません」も正しいことになっている。一応理屈としては「申し訳」という名詞もあるので、それにございませんをつけてもいいだろうが、とんでもという名詞はないので、とんでもございません、は今に至るまで間違いと言うことに……ああ面倒くさい!

 ちなみに、「全然」のあとに肯定系が来る形式は、夏目漱石も書いているほど古くからある用法で、今ではほぼ市民権を得ている。

 こと、日本語の用法になると誰しも一家言ある。飲み会の話題としても「今時の若い連中の言葉づかいときたら」と、格好の素材である。正直、このテーマで原稿を書くのはとても辛い。読者の皆さんから突っ込まれるのではないかと気にしつつ書いている。

「ら抜き」1つで冷戦状態に

 『ら抜きの殺意』は戯曲である。テレビドラマを見ている感覚で台詞とト書き(うごきなどの説明)を読んでゆけばよい。小説よりずっと読みやすい。しかもテーマは「正しい日本語」で、コメディになっている。

 舞台は通信販売の会社。電話での顧客対応が主な仕事だ。インターネットやテレビ通販に負けじと顧客を増やすため、24時間対応にするべく夜間のパートの新規募集に社長の堀田が奔走する。が、そうそう人手は見つからず。次こそは若い女子パートを、と熱望していた男性正社員・伴は毎回期待を裏切られ、もはや全く期待していない。

 が、午後6時から深夜0時までの夜間のパートにとうとう応募が! 期待に胸ふくらませる伴の前に現れたのは、ビシッとスーツで決めた、なにやら訳ありの中年男性、海老名。何かと難癖つけてやめさせようとする伴と、誰でも良いから早く雇いたい社長の間で一悶着あった末に、海老名は夜間の電話対応係として採用され、社長は英会話のレッスンに去ってゆく。

 残された2人。年は下ながら先輩であり正社員の伴は、新人の海老名に履歴書を書かせながらぞんざいに指導する。

食いモン、持ってきてくださいね。いったん入ったら出れませんから。
海老名
(書いている)
バイトの方は食事休憩なしです。いったん入ったら、外に出れないんです。
海老名
(書いている)
聞いてます? バイトの方は……
海老名
「出れない」とは、どういう意味ですか?
だからぁ……
(中略)
海老名
さっきあなたは、きちんとした標準語が話せなければ困るとおっしゃいましたね。そのあなたが「ら抜き言葉」を使っていいんですか?
何ですか、「ら抜き言葉」ってのは?
海老名
「出れる」とか「見れる」とか「来れる」とか。本来「ら」を入れるべき所から「ら」を抜いている言葉づかいのことですよ。
(中略)
「出れる」って言ってんのは私だけじゃないですよ。あちこちで言ってんでしょう。聞いたことないんですか?

 海老名は「ら抜き言葉」を「あちこちで言ってたって、間違いは間違い」「日本語に対する犯罪的な行為」「虫酸が走る」「血が逆流する」とまで言い切り、対して、ただでさえ海老名が気にくわない伴は、わざと「ら抜き言葉」で言い返す始末。大の大人が「ら抜き」1つで冷戦状態に。

コメント3件コメント/レビュー

【させていただく】は絶対使わないと心に誓っております。(2011/03/07)

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いただいたコメント

【させていただく】は絶対使わないと心に誓っております。(2011/03/07)

正しい日本語は、その時々の状況で変わります。使い分けが正しくできるかどうかが今日の問題だと思います。(2011/03/07)

爆笑しつつもドキッ!でした。社会人歴長いですが、自分もどこかで間違ってるなと冷や汗…。話し言葉は生き物だから、変化するのは当然ですが、明治以来の言文一致が、平成では急激に加速して敬語と日常語がボーダーレス?動詞の活用+その後に付ける言葉でバラエティに富んだ表現になる日本語ならではの珍事かも(笑)日本では会話の相手のランク重視だから敬語の概念があるが、欧州語だと行動重視だから、動詞の活用はまず相手が自分か他人かを区別する。日本語を学ぶ外国人に、自分を指す表現の説明をすると大ウケします。私、おれ、ボク、わし、小生、拙者…。英語なら「I」で済むのに、何でこんなに区別するのか?と。行動よりも対話の相手との立場の違いにこだわった日本人の特性なのかも知れませんね。そのDVDぜひ見たいです。(2011/03/07)

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三品 和広 神戸大学教授