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資本主義以前にあった、自給自足、互恵、再配分

配分する[3] ――正義について考える【14】

2011年3月17日(木)

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自給自足

 このようにアリストテレスの時代は市場が登場してきた時代であり、アリストテレスはまだ自給自足の世界だった。この世界では「閉鎖集団」が、「集団の成員の欲求を満足させるための生産と貯蔵という原理」にしたがって行動する。この生産活動は、利潤を目的とするものではなく、成員に生産物を配分することを目的とするものであった。

 ポランニーは、市場における交換という原理が経済の中心的な原理になったのは、資本主義の社会からであり、それが現代のように自明なものではないこと、そして市場経済をごく当然のことと考える現代人には、交換という原理以外では理解できなくなっていることを指摘する。そして資本主義以前の社会の原理としては、アリストテレスが考えた自給自足の原理のほかに、互恵と再配分の原理があったことを指摘している。

 これらの原理は正義の法によらずに、社会において公正さを実現する力があるのである。これらの原理によって、法による正義の実現ではなく、社会的な制度による公正さの実現が行われていることに注目したい。これらは法を迂回して分配の正義を実現するのである。

互恵

 トロブリアンド島のような部族的な社会では、互恵と再配分の原理によって社会的な紐帯が維持されている。経済活動や市場での交換は社会のうちに埋めこまれた形でしか行われない。この島では夫は母方の親族に自分の収穫の最良の部分を引き渡し、「自分の姉妹や彼女らの家族を養う」[1]のであり、自分の妻や子供には与えない。妻子はその母方の男の兄弟から収穫物を受け取るからだ。

 この男性はその行為にたいして名誉をえるが、「直接的な物質的な利益を引き換えとしてえることはほとんどない」[2]。「彼自身の畑地と受け取り手の倉庫の前との双方でなされる食物の儀式的な展示は、彼の耕作のすぐれた腕前が人々にあまねく知れわたることを保証する」[3]。そして互恵の原理が働いて、妻子が食物を確実に受け取ることができるだろう。

 しかし怠慢であれば、評判が傷つけられることになる。そして彼はその共同体の内部で肩身の狭い思いをさせられるに違いない。サモア人は、空腹であれば誰の小屋にも飛び込むことができ、食事を与えられるという。しかし「狩りの能力がありながらこのような物乞いをすれば、入手した肉片の代わりに大きな犠牲を払う。というのも、彼には臆病者とか物乞いなどの恥ずべき汚名が着せられるからである」[4]。このように「互恵という広範な原理は、生産と家族の両方を保証する役割を保証する助けとなる」[5]のである。

対称性

 この互恵という原理を機能させているのが対称性という社会的なパターンである。多くの原始的な社会は、部族のさまざまなレベルで双分的な組織を形成する。半族に分かれて、たがいに配偶者をやりとりし、さらに「それぞれが儀礼上の単位となって、相互の互酬的行為を通じて儀礼を構成する」[6]のである。

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「資本主義以前にあった、自給自足、互恵、再配分」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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