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正義が実現される理想的な共和国とは

配分する[5] ――正義について考える【16】

2011年3月31日(木)

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ケーキの分け方

 ケーキがあって、それを二人の少女の間で、できるだけ公平に分けるにはどうしたらよいだろうか。よく知られているように、一人の少女が自分で納得できるように切り分け、もう一人が先に選ぶのだ。不公平な切り方であれば、大きな方を取られしまい、自分には小さなケーキしか残らない。

 イギリスの一七世紀の思想家ハリントンは、この分配方法が権力の分配にも適切なものだと考えていた。『オシアナ』という正義が実現される理想的な共和国について語った書物においてハリントンは、ケーキを分ける必要があるときは、「一人の少女は相手に、〈お切りなさい、わたしが選ぶから〉あるいは〈切らせてください、あなたに選ばせてあげるから〉と言うであろう。そしてこの合意さえ成立すれば、それで十分なのである」[1]と語っている。

 そして「偉大な哲学者たちが無益に論じていることが、二人の愚かな少女によって明らかにされる。国家のあらゆる謎でさえ、これで解かれる。それはただ分けることと選ぶことにのみ存するからである」[2]と強調する。ケーキの切り方という日常的な例から、国家における権力の公平な分配の原則を考えようという視点は面白い。

国家の構成

 具体的にはどのようなことだろうか。ハリントンは国家が二〇人でできているとすると、そのうちの六人くらいは残りの人々よりも賢明だろうと考える。この六人が選ばれて元老院を構成し、残りの一四人が民衆になる。これが最初の選別である。

 選別が終わると次は分割である。元老院は、さまざまな議題について審議し、提案を作成する。これは異なるものを区別し、「比較考量することであるか、これは分割することにほかならない」[3]とハリントンは主張する。それでは分割した後で誰が選ぶか。元老院が選ぶとすると、国家に平等は成立しえないだろう。選択するのは大衆で構成される評議会である。分割する元老院が国家の智恵であるとすると、「評議会は国家の利益を代表する」[4]のである。これで国家の二〇名の全体の利益が守られることになる。

 分割はさらにつづけられる。元老院が法律案を提案し、評議会が提案された法律案のうちのどれが国家に、すなわち自分たちに好ましいかを選択する。これは立法機関である。この立法機関が法律をいわば「分割する」[5]のである。ただし法律を定めた機関が、法律をそのまま実行するのであれば、その法の執行は恣意的なものとなりがちだろう。そこで定められた法律によって行われるべき行為を選択するのは、立法機関ではないことが望ましい。だから立法機関とは別に法を執行する機関が必要であり、これが行政機関である。

 ハリントンは元老院は貴族政治の性格を帯びており、評議会は民主政治の性格を帯びており、行政府は王政の性格をおびていることを指摘する。当時は、ローマはこの三つの権力がたくみに分配されていた理想的な国家だとされていたので、ハリントンはこの三つの政治の性格が混淆したこの国家は完全なものとなると考える。そして「技術的にも本質的にも、これ以外の国家はない」[6]と断言するのである。

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「正義が実現される理想的な共和国とは」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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