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「ひとつになろう」より「てんでんこ」がいい

2011年4月1日(金)

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 東京の桜は、今週末ぐらいから見頃をむかえそうな気配なのだが、花見の宴会は自粛するところが多いようだ。
 まあ、仕方がない。妥当な判断だと思う。
 とはいえ、その判断が、行政当局に自粛を示唆された上での決断だということになると、ちょっと意味合いが違ってくる。
 少なくとも後味はずっと悪くなる。

 自分たちで決めた自粛は、思いやりの結果でもあるし、節電への決意のあらわれでもある。その意味で尊い。
 が、上から言われた自粛には、独立自尊の潔さが無い。美しくない。
 ということで、他人の顔色を見て決定される自粛については、「他粛」という言葉を提唱したい。他粛は、今後しばらくの間わが国において多発することになるはずだ。でも、流行語大賞には選ばれない。どうせ審査員が偉い人達の顔色を見て投票を自粛するに決まっているから。無念。

 花見の自粛に関連して、29日付けの時事通信は以下のように伝えている。
『東京都の石原慎太郎知事は29日の記者会見で、東日本大震災に関連し、「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃない」と述べ、被災者に配慮して今春の花見は自粛すべきだとの考えを示した。
 石原知事は「今ごろ、花見じゃない。同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感が出来てくる」と指摘。さらに「(太平洋)戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」とも語った。
 都は既に、花見の名所となっている一部の都立公園について、節電などのため入園者に宴会自粛を呼び掛けている。』

「一杯飲んで歓談するような状況じゃない」
 という部分については、私も石原さんとほぼ同意見だ。
 でも、アタマの中でそう思うことと、それを口に出すのは別の話だ。知事のような立場にある人間は言葉を選ばないといけない。
 知事があえて自粛を示唆するまでもなく、半数以上の日本人は、花見への参加を控えたはずで、だとすれば、桜の木のまわりの風景は黙っていても例年とはずいぶん趣の違ったものになっていたはずだ。
 無論、自粛しない人びともいるだろう。が、彼等には、彼等なりの事情がある。そこのところは尊重しなければならない。

 花見にも色々なパターンがある。
 夕方のワイドショーが好んでレポートする、おっさんがネクタイを鉢巻にして踊っているみたいな絵柄だけが、日本の花見のすべてであるわけではない。
 テレビは、彼等が「花見らしい」と考えるティピカルな宴会を、「絵になる」からという理由で、集中的に取材する。だから、画面の中の花見は、十年一日、酔中別人の無礼講をリピートすることになっている。

 が、そうでない花見もある。
 はなればなれになっている親しい仲間が、年に一度、桜の季節を期して集うタイプの、奥ゆかしい観桜会もある。
 花の美しさを愛でるよりも、桜の儚さをかみしめることに重心を置いた、風流な集まりもある。
 というよりも、全体を見渡してみれば、上野公園あたりで何日も前から場所取りをしている人々が展開しているような、落花狼藉の乱痴気騒ぎはむしろ少数派で、多くの日本人は、年に一度のこの美しい時期の自然を、穏やかに享受しているはずなのだ。

 それでも、知事の自粛示唆そのものは、ぎりぎり、理解できる範囲にある。
 都立公園の桜をライトアップする類の住民サービスを省略する件についても、節電の主旨からして、やむを得ざるところなのだろうと思う。
 でも、「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感が出来てくる」「戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」
 というセリフは余計だったのではなかろうか。
 この部分だけをとらえると、石原さんが、われら都民に戦争中のような「滅私」と「忍耐」と「連帯」を期待しているように聞こえてしまう。
 期待しているのかもしれないが。

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「「ひとつになろう」より「てんでんこ」がいい」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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