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コスト度外視で学ぶ『熊田千佳慕のクマチカ昆虫記』
~手間を惜しまないからできること

  • 大塚 常好

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2011年4月4日(月)

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 虫と同化すること――。それが、この人の「仕事」だった。

 2009年に98歳で亡くなった細密画家・熊田千佳慕(ちかぼ)。代表作は、昆虫の産毛のような体毛や、植物の葉脈一本一本までを丁寧に描いた、『ファーブル昆虫記』を絵本化した作品だ。

 70歳の時、国際的な絵本原画展で「クマダの虫は生きている」と高い評価を受け、「日本のプチファーブル」として世界的に知られた。

 小さな時から、人生の師と仰ぐファーブルの『昆虫記』の絵画化を目指していた千佳慕。昆虫の外見の特徴など絵画制作上必要な文字情報を『昆虫記』から抽出しつつ、独自に下調べした虫の生態や習作スケッチを加えた、千佳慕の自作スクラップブックを書籍化したものである(千佳慕の死後、スクラップは発見された)。

虫の心まで見極める

 年老いても千佳慕の日課は、原っぱに匍匐前進スタイルで寝転がることだった。3時間、4時間、納得がゆくまで虫や草花を眺める。行き倒れの老人と間違えられることもしばしば。

 驚くのは、何と言ってもその観察方法である。ただ、ぼんやり眺めたり、写真におさめたりするのではない。

「見て、見つめて、見極める」

 虫はよく動き回るが、その姿がまぶたに焼き付くまで観察する。スケッチさえしないで、とにかく凝視する。色、形、生態だけでなく、虫の心まで見極める。「虫の本当の姿を自分のものにした」と思えて初めて紙に向かう、という。

 さて、本書で紹介されている虫は、フンコロガシ、ハチ、モンシロチョウ、バッタ、セミ、コオロギ……。

 例えば、「カオジロイブキギス」というキリギリスについてこう記述している。

〈食べ物はヒエの穂なども食べるが、れっきとした肉食である。略。好んで食べるのはアオバネバッタである。エモノはカオジロイブキギスの前足のカギに引っかけられると、まずはじめに首ったまを齧られる〉

 続いて、メスとオスが出会い、メスはオスを食べ、メスは地中への産卵し、幼虫は土の中から飛び出てくる。そんな虫の営みが書き連ねられる。

 淡々とそのプロセスをメモるだけの一見無機質な形式だが、読み進めて行くと、千佳慕の目を通した虫世界に、何やら詩情性やユーモアを感じるのである。

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