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国家を設立する目的は「所有」を保護するという正義を実現するため

配分する[8] ――正義について考える【19】

2011年4月21日(木)

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政府の設立

 マキアヴェッリはイギリスでさかんに読まれたが、この権力の分立論をイギリスの伝統の中で明確に表現したのが、ジョン・ロックの『市民政府論』である。そしてこのアメリカ革命とアメリカの独立は、この『市民政府論』を重要な武器として成立したのだった。この書物は、北アメリカの植民地が本国に抵抗して独立するために、大きな貢献をしたのである。

 ロックのこの書物は二つの局面において、アメリカの独立に貢献した。立法権論が注目された局面と、権力分立論が注目された局面である。まず立法権論から考えてみよう。ロックはホッブズのように、自然状態が戦争状態であるとも、万人は万人にとって狼であるとも考えない。自然のうちで人々は和合して暮らしているのであり、すでに財産を所有した人々による社会が成立していると考えるのである。

 この社会では、人々は矯正の正義を実現する力をもっているとロックは考える。所有を奪われたならば、それを奪い返すのは人間に認められた自然権である。「人間は、自分の所有すなわちその生命自由および財産を他人の侵害襲撃に対して守る権力をもっているばかりでなく、他人がこの法を侵犯した場合には、……死罪をもって断罪し、これを処刑する権力を所有する」[1]のである。

 ただしその場合には原告が裁判官になり、他者を殺害することが認められるために、不正義が発生する可能性がある。この不正の発生を防ぐために人々は国家を形成して、この自然権を放棄し、生命、自由、財産を守る政府を設立したのである。

立法権

 このように人々が国家を設立する目的は各人の所有を保護するという正義を実現するためであり、これを実行する手段は法律にある。そこでロックは、立法権が国家の最高の権力であり、「真正不易」[2]な権力であると主張する。この権力についてロックは次の四つの原則を提示する。

 第一の原則は、「人民の生命財産に関して絶対的に恣意的ではないし、ありえない」[3]ということである。この権力の適用対象は「社会の公共の福祉」だけに限られており、「臣民を滅ぼさせ、隷属させ、故意に疲弊させるような権力を、決してもつことはない」[4]のである。この権力は、人類の保存という自然法の原則に背くことはできないのである。

 第二の原則は、「臨機的で恣意的な命令によって、支配権を僭取することはできない」のであり「恒常的な法と公知の授権された裁判官によらねばならない」[5]のである。これは法治主義の原則である。

 第三の原則は、立法権は、その「所有の一部といえども、その者自身の同意なしに取ることはできない」ことである。なぜならば、「所有の維持は、政府の目的である」[6]からである。ここでロックは権力の分立の問題を提起する。正しい法が存在していても、臣民に命令する執行権をもつ王がその所有の任意の部分を奪い去るならば、「人の所有権はまったく保障されない」[7]ことになるからである。これは人民の同意の原則である。

 第四の原則は、「立法府は法を作る権力を他の者に譲渡することはできない」[8]ことである。立法府を作ったのは人民であり、立法府の役割は法を作ることであり、立法府を作ることはではない。だから法を作る権力を譲渡することはできないのである。譲渡不可能の原則である。

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「国家を設立する目的は「所有」を保護するという正義を実現するため」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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